コナン&まじ快
□互いの正体
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「今日も随分読んでらしたんですね・・・栞嬢は様々な本を読まれるようですが、特にお好きなのはどのような本ですか?」
「そうね、やっぱり推理小説が大好きかしら。工藤先生の本は特に好きよ。
そういう貴方は?好きな本とか作家さんとかいるのかしら」
本の事を話す時の栞は本当に楽しそうな顔をする。
そんな表情を間近に見られることも嬉しくて、本を自ら開く事などそうは無いが、唯一気に入っている作家はいなくも無い。
それこそ怪盗キッドの様に、優美で不敵な怪盗が出てくるジゼルシリーズの物語・・・
好きな本くらいなら教えてもなんら問題は無いだろうと思い、口を開いた。
「私は"説推 小理"の本が好きですね、内容も勿論ですが装丁も凝っていて本自体が芸術品のようでね」
「あら、キッドからミステリー作家の話が出るなんてちょっとびっくり・・・
でも装丁にまで目を光らせるなんてとても貴方らしいわね。"説推 小理"の本は私も読むけれど、貴方が同じ本を読んでいると思うとなんだか嬉しい」
「過日出た本もとても素晴らしかった、ただ珍しく・・・本の装丁の箔押しの色合いが"説推 小理"らしくないとは思いましたが・・・」
「箔押しの色・・・?過日というと"時の旋律と刻銘"かしら?」
「いえ、それより前ですね・・・"双緋の鎖"の方ですよ」
俺が栞に貰う形になってしまったあの本だ。
まだ海外での出版のみで翻訳もされていない洋書ではあるが、発売から一ヶ月は経っている。
海外から取り寄せて読んでいたとしても、ファンであればなんら不思議は無いだろう。
そう考え言葉を続けた。
「いつもは背景の柄や色味をよく考えて、とてもよく生える色でタイトルの箔押しをされているのですが・・・
今回はどうにも緋色主体の配色に青い箔押がされていて・・・不思議に思ったんですよ」
「・・・これはまた・・・えらく予想外の展開ね・・・」
「・・・栞嬢?」
目を見開いて俺を凝視している栞に俺は首をかしげる。
何をそんなに驚いているのだろうかと・・・
彼女の口元へと運ばれるはずだったカップは胸の辺りで止まり、ゆるゆるとカップソーサーへ置かれてしまった。
「困ったわね、こんなに早く貴方の正体を暴く羽目になるなんて思わなかった・・・」
その台詞に固まるのは今度は俺の方で、テーブルの上に両肘をつき、胸元で手を組み俺を見つめる栞から目をそらす事も出来ず・・・自分のトクトクと大きくなっていく心音を感じていた。
焦りを感じる俺を余所に、栞は今いろいろな事が脳内を駆け巡っているのだろう。
なにやら頷きながら、自分の中に生まれてくる事柄に納得しているようだ。