コナン&まじ快

□互いの正体
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あの出会いの日から、俺はずっと彼女の事を調べていた。

けれど分かった事といえば彼女の普通の生活での身の回りの事だけで、栞の持つもう一つの顔の事は一欠けらの情報も出てこなかった。

亡くなった今でも有名な、女優の『藤吉咲』の娘である事、そして父親まで亡くなっている事・・・

出身校や在籍していたクラブや道場、そして小3の時、団体戦ではあるが剣道の大会で大将として出場し、香川で行われた全国大会で優勝経験がある事

自分で調べた以外にも、彼女と話すうちに知った事もある。

とにかく身体を動かす事が好きで、道場には通っていないが剣道もまだ続けているようだ。

そして彼女が服のポケットに必ず忍ばせている物・・・

ずっと彼女を見ていたからこそ気付いた事。ふわふわ揺れるスカートの右側だけ・・・どんなに強い風邪が吹こうとも微動だにしないのだ。

気になって何を入れているのかと聞いてみれば、それは長さ15cm・直径4cm程の円柱の棒で、それが何なのか分からず首をかしげた。

不思議そうにしている俺の横で、栞は手にしていたその棒を徐に振り抜く。

すると今まで短かったその棒は、カチカチと何かが嵌るような音を立てながらその姿を変えた。

それは紛れもなく木刀の形をしていて、彼女いわくお手製なのだそうだ。

手元のロックを外し思い切り振れば、遠心力で収まっている刀身が現れ、片付ける時は刀身を上にして立てロックを外せば、重力にしたがって刀身が収まるという仕組み。

形状的に中が空洞なので、強度を保つために、材質は木ではなく鋼鉄・・・

"何でそんなもん持ち歩いてんの!?"と思わず聞くも、"必要に迫られて"と言われ首をかしげるしかない。

彼女いわく"剣道は手元に得物があってこそだからね、咄嗟に反応できないと困るもの"そう言っていたが、彼女はそもそも合気道もやっていた訳で・・・

痴漢程度ならなんら問題ないはずだが、一体何を相手にする前提にそんなものまで持ち歩いているのか謎である。

ロス滞在中は最初の1年間はElementary schoolの寮で、Junior high schoolに上がる際自分の部屋を借り一人暮らしを始めたようだ。

ただこれも2年間だけで、3年に上がるか上がらないかの頃から、保護者代わりの工藤夫妻と生活を共にするようになったらしい。

ここで出た工藤優作という人物に、栞から貰った本の出所はそこなのだろうと一人納得する。

しかしやはり謎は謎のままで、もはや彼女と直接話す事でしかヒントは得られないであろうと思い、仕事の有無に関係なく、夜は頻繁に彼女の元を訪れるようになっていた。



「思いのほか栞嬢のガードが固いもので・・・今まで狙ったどんな獲物より厄介で困惑しておりますよ・・・」

「あらあら、ポーカーフェイスが崩れてるわよ?」

「栞嬢には敵いませんね、私は貴方の感情一つ・・・読むのにかなり苦労しているのですがね・・・」

「お褒めに預かり嬉しいわ?」



そういってクスクスと笑う栞に、俺は困り顔で苦笑する。

いつも似たような感じで流されてしまい、砂の欠片ほどのヒントも出てこないのだ。

彼女の就寝中に家の中を調べれば流石に何かしら出てくるであろうが、それはなんだかズルイ気がして踏みとどまっている。

けれど栞が同じクラスに入ってきたおかげで、キッドとして接するだけよりは知ることが出来た彼女の事。

たまに何かを思い立ったように動きが止まる事、常に傍らに手帳を置き、何かしらメモを取っている事・・・

特に言えるのは学校でも家でも必ず何か本を手にしている事。最初の時にも思った事だが、本当に雑多な本を読み漁っている。

現に今だって、俺と話しているから広げてはいないが、今まで読んでいたのであろう本が傍らに置いてあった。
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