コナン&まじ快

□快斗&KID誕生日企画
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発熱


今日は朝から栞がおかしい。

何がどうって訳でもないが、違和感を覚えて仕方がない。

別段顔色は悪くないし、機嫌も悪くない。青子達ともわいわい話していて、体育の授業もいつも通り完璧にこなしてた。

一応栞にも"何かあったか?"と聞いてみたが、俺の言葉が何に対してなのか不思議そうにしていた所を見れば、本人も特に何かあったわけではないらしい。

けれど気になって気になって、四六時中栞をみていた。

そこでようやく気づいた事、少しだが呼吸のペースが早い気がする。

それに、今日の気候的にはどちらかと言えば涼しいくらいなのにうっすらと肌に浮かぶ汗・・・

"もしかしたら"と思いながら、授業中ではあるが隣の栞へと話しかけようとしたが、教師からの指名にそれは遮られた。



「はい、ではこの問題を藤吉さん」



それが耳に届きスッと立ち上がった栞の口から、いつもなら完璧と言われるまでの答えが返ってくるはずなのだが・・・

なのに今日はそれが叶わないどころか、よもや教科すら現在の数学とは噛み合っていなかった。



「・・・族は縦方向の集合であり・・・名称が付けられているが、それらはアルカリ金属、アルカリ土類金属・・・ハロゲン、ニクトゲン、カルコゲン、希ガスとは統一性が・・・」

「あの・・・藤吉さん・・・?」

「栞」

「え・・・何・・・?」



突然栞へと呼びかけた俺に集まる周りの視線も無視し、立ち上がりその額に手を当てる。

その額の熱さと、そして何よりも平然と授業に・・・むしろ学校に来ているコイツに溜息が出た。



「せんせー・・・こいつ熱あります。しかもおそらく8度超え」

「えぇ!?ほ、保健委員は・・・えっと・・・」

「ね・・・熱?え・・・?」

「俺が連れてきますんで。ほらいくぞ栞」

「え、あ、ちょっと快斗!」



自分に何が起きたのかもわからない様子で首を傾げている栞の手を掴み、教師の言葉やクラスの奴らからかかる声も無視して教室を出た。

掴んだ手はこれ以上ないほど熱く、保健室ではなく早退したほうが良いのではないかとさえ考えるが・・・

一人で帰すのは不安であるし、彼女には迎えに来てくれる家族もいない。

保健室で放課後まで休ませて俺が送っていこう、うん。

ただそれよりも・・・



「ったく、なんでこんな熱あんのに学校来てんだよ!倒れでもしたらどうすんだ!」

「え、えとごめん快斗・・・でも私、自分で熱があるなんてちっとも・・・」

「・・・まさか・・・我慢してたわけじゃなくて、気づいてなかったとか言う!?」

「そのまさかです・・・」



その言葉には流石にため息しか出なくて・・・

思わず軽くその頭を小突いてしまうが、それに申し訳なさそうな表情で"ごめんね、有難う"なんてはにかんで笑うものだから、いつもより力ない表情ではあるけれど普段見ないその表情に引きつけられてしまうのも仕方ないと言うもので。

少し顔を染めながらも、保健室まで繋いだままの手を離すことはしなかった。

けれど、到着した保健室の扉を開ければ、いつもそこに居るはずの校医の姿がなく・・・

無断ではあるが校医が戻ってくるのも待っていられなくて、栞をベッドへと促した。



「先生には俺がちゃんと言っとくから、栞は取り敢えず寝てろよ。放課後になったら俺が家まで送ってってやっからさ」

「迷惑かけます・・・」

「んなこと思ってねーよ、病人は大人しく甘えてればいーの!」

「・・・ありがと・・・」

「おう!」



ベッドへと身体を横たえた栞の身体に布団をかける。

自覚はないながらも、やはり身体はしんどかったようで、体から力が抜けると一気に眠気が襲ってきたようだった。

ただそれよりも・・・熱のせいで上気しほんのりと赤くなった頬・・・うっすらと潤む瞳・・・

そんな栞を見下ろしていて、正常な自分でいるほうが難しいというものだ。

これ以上此処にいてはいろいろまずい。そう思い、横たわる栞の頭を軽く撫ぜ教室へ戻ろうと踵を返した時だ。

一歩前へと踏み出した瞬間、服の裾を引かれた感覚に首を傾げる。

何処かに引っ掛けたかな、なんて見てみれば、思いもよらず目に飛び込んできたのは細い指先・・・



「あ・・・いや、ごめん・・・なんか風邪だと認識したら・・・少々人恋しく・・・なってしまいまして・・・つい・・・」

「え、何々?添い寝してあげようか栞ちゃん!」



なんて、実際そんな事をすれば自分が我慢できなくなるのは火を見るより明らかだが。

あまりに可愛いことを言ってくれる栞に、その気持を誤魔化すようにそう言っていた。



「・・・それはダメ、快斗に風邪が移ったら困るもの。でも・・・」

「・・・ん?」



意識がまどろみながらも、俺のことを気遣ってくれる栞に嬉しくなる。

けど、その続きが気になって首を傾げれば、栞が珍しく目を泳がせ、恥ずかしそうに布団に顔を埋めた。

そして次にその口から紡がれた言葉に、逆に俺のほうが顔を染め上げるのは至極容易で・・・



「少しの間、手だけ貸してもらえると・・・嬉しい、です・・・」

「・・・っ!わ、わーったよ。栞が寝るまではここで手握っててやっから、安心して寝ろよ」

「うん・・・」



あぁもうなんなの!可愛すぎるだろ栞ちゃん!!

普段の栞からはおよそ想像できない仕草、そして言葉に、"風邪ひきな栞もたまんない!"なんて不謹慎なことを思ってしまった。

赤くなった顔を抑えながら、その柔らかな手を握っていたら程なくして聞こえてくる寝息。

完全に寝入ってしまったのを確認してから、教室に戻ろうかと思ったが、ぎゅっと握られているその手を離してしまうのはなんだか勿体無くて・・・

スヤスヤと眠るその顔を眺めながら、気がついたら俺までベッドに突っ伏して寝てしまっていた。

結局、栞の柔らかな声で起こされるまで起きることはなく。

放課後二人で苦笑して学校を後にし、栞の家まで手を繋いで帰った。




(今日はありがとね快斗)

(おー、ゆっくり休んで早く治せよ!なんかあったら電話でもメールでもくれれば、夜中だろうが飛んできてやっからさ!)

(ふふ、なんだが文字通り"飛んで"きそうで怖いけど)

(勿論、昼ならこの快斗くんが。夜なら白い怪盗が、栞の為に駆けつけてやるよ!)


Special Thanks めろんぱん様
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