コナン&まじ快

□快斗&KID誕生日企画
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誘拐・人質・素敵なお迎え



「随分大人しいな小娘、怖くて声も出ねぇか?」

「いえ、そういう訳ではないわ。ただ・・・よりによって私を人質に誘拐するなんて、可哀想な犯人さん達だとね」

「どういう意味だ・・・小娘のただの強がりか」



学校帰り、横断歩道の信号待ちで快斗と談笑していた私は、突然背後に停まった車の中に引きずり込まれた。

車の中には男が二人いて、その傍らには大量のお札が入り閉まりきっていないボストンバッグ。

銀行強盗の逃走中、人質でも取っておこうと思ったのか近くにいた私を連れ去ったといったところだろう。

拉致られた時は夕方だったが、結構な距離を移動したため日は落ち、あたりは闇に包まれている。

一旦落ち着いてこれからのことを仲間と決めるためだろう、何処かの倉庫へと連れ込まれ、男達の視界内に縛られているというわけだ。

ただ、騒ぎも泣きも、怯えすら見せない私に訝しげに思ったのか、男の中の一人が話しかけてきた。



「・・・どう取ってもらっても構わないけれど、警察より早く私のお迎えが来るのは明らかだもの」

「なん・・・だと?」



いう訝しげに、目の前の犯人が呟いたのとほぼ同時だった。

薄暗く部屋を灯していた白熱灯は光を失い、あたりを包む漆黒。

窓ガラスの割れる甲高い・・・そして、砕けた破片がチャリチャリと床に落ちる音が聞こえた。



「な、なんだ!?」

「おい、何が起きてる!何か明かりはないか!!」



現状が把握できず、慌てふためく犯人たちの声が闇の中に響く。

私の目の前にいたはずの一人も、突然事に対処できず仲間のいた方へと足音が遠ざかる。

その代わりというわけではないが、静かに・・・足音を立てることなく、私の後ろに現れた人の気配。

けれど私はそれに焦るどころか、安堵の溜息をひとつ漏らした。

それが誰であるか、暗闇でも伝わってくる優しい、暖かな・・・けれども凛とした気配・・・
手元を縛っていた縄の圧迫感が消え、かわりに与えられたのは、力強くも優しさを含んだ身体への抱擁。

ぎゅっと抱きしめられれば、とても安心する嗅ぎ慣れた香りが鼻をくすぐった。



"お迎えに上がりましたよ栞嬢、怪我などされておりませんか?"

"えぇ、さして問題は無いわ。ごめんなさいね、お迎えを頼んでしまって"

"申し訳ありません、私が共にいたというのに・・・みすみす貴女を拐われてしまうとは・・・"

"いいのよ、貴女がこうして迎えに来てくれると信じていたしね。ありがとうキッド"



犯人たちへと気取られないよう小声で言葉をかわし、キッドは私の身体を片手で抱いたまま懐のワイヤー銃へと手を伸ばす。

パシュッという音を立てて伸ばされたワイヤーは、二階の手すりへと巻き付き、私とキッドをその通路へと引き上げた。

窓際へと降ろされ、近くの物陰へ押し込められれば、ようやく正面から向きあい闇の方が濃いため朧気ではあるが、視界に広がる端正な顔立ち。

その吸い込まれるような青い瞳に、自分の姿がくっきりと映る。

どちらともなく唇を合わせ、ひとしきり抱き合った。
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