コナン&まじ快
□快斗&KID誕生日企画
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月夜のお茶会
"快斗、今日の夜行くんでしょう?終わったら帰りに寄ってくれる?"
次の仕事の下見を終えた俺は夜空を漂いながら、今日の学校帰り栞に言われた言葉を思い出し、進路を彼女の家へと向けた。
普段なら栞が怪盗の俺を呼ぶことはしないのに、わざわざ夜、しかも仕事帰りを指定して寄って欲しいと言うからには、おそらく怪盗としての俺をご所望なのだろう。
どうしたのだろうかと首を傾げながらも、見えてきた今や見慣れたバルコニー。
ただひとついつもと違ったのは、栞がバルコニーでティーセットを用意して待っていたこと。
視線こそ下に落とし本は読んでいたが、俺が地に足を着けた音に顔を上げた。
「こんばんは栞嬢、お待たせしてしまいましたか?」
「いらっしゃいキッド。お呼び立てしてごめんなさいね?」
「とんでも無い、栞嬢のお呼びとあらばいつ何時でも足を運ばせて頂きますよ」
待ってたと言わんばかりに抱きついてくる栞を受け止め、そのまま唇を重ねる。
リップ音と共に離れ、至近距離の栞の笑顔に、思わず心臓が大きく鳴った。
手を引かれデーブルに促され、"ちょっと待っていてね"と部屋に引っ込んだ栞の背中を見つめる。
程なくしてバルコニーへと戻ってきた栞が手に持っていたものを目にすれば、嬉しさにポーカーフェイスなんて忘れていた。
テーブルに置かれたのはチョコレート色のホールケーキ。
綺麗に飾られたその中心には、ホワイトチョコで出来たプレートに"Happy Birthday KID"の文字・・・
「愛しい人の折角の誕生日だもの。やっぱり直接お祝いしたくてね」
「有難うございます栞嬢・・・ですが、昼の顔でもプレゼントを頂いたはずですが・・・」
「あれは快斗へのお祝いだもの。だからキッドへも、ちゃんと"おめでとう"って言いたかったのよ」
ケーキを切り分けながら、さも当たり前のようにそう言った彼女に嬉しくなる。
学校でも、満面の笑みで"誕生日おめでとう!"と、至極楽しそうにプレゼントの包みをくれた栞。
嬉しくて仕方なくて、あまりににやけていた所為で青子に"気持ち悪い"と言われたのを思い出す。
一度祝われていたため、まさかキッドの呼び立ての理由が誕生祝いのことだなんて微塵にも思わなかった。
「今日が仕事当日じゃなくてよかった。そうでなければこうやって・・・月夜を背景にのんびりティータイムなんて出来なかったものね」
「そうですね・・・仕事後ですとそこら中にカラスが飛んでいて、この和やかな雰囲気は味わえませんから」
ディンブラのストレートティーに、甘いチョコレートケーキ。
そして目の前には好きで好きでたまらない、恋人の栞・・・
今までの人生の中で、これ程までに嬉しい誕生日はない。そして美味しいケーキも。
口の中に広がる甘さを楽しみながら、彼女とのトークに花を咲かせる。
まるで物語を切り取ったような月夜のお茶会。
こんな時間がこれから毎年過ごせたら・・・なんて、柄にもなく思ってしまった。
「栞嬢・・・」
「何?」
「実は少々前からお渡ししたいと・・・いえ、頂きたいと思っていたものがあるのですが・・・」
「・・・随分と真逆の言葉なのだけれど、せっかくの誕生日だもの。私があげられるものなら良いのだけど・・・」
「えぇ、むしろ栞嬢からでなければ意味のないものです」
流石に俺が何を言いたいのか分からないようで、首を傾げながら見つめてくる栞。
そんな仕草も愛しくてたまらない。
付き合い始めてちょっとした頃から、ずっとポケットに忍ばせていたものを取り出し、栞の左手を取る。
カウントを初め指を鳴らせば、その薬指に光るシルバーリング・・・
「キッド、これ・・・」
「予約を・・・しても構いませんか?いつか、貴方を頂くその約束を・・・」
握っていたその手元に顔を近づけ、そのはめられたリングへとキスを落とす。
ゆっくりと顔を上げれば、今まで見たこともないほどに真っ赤に染まった栞の顔。
その反応に嬉しくなり、引き寄せて抱きしめた。
"栞嬢、その反応は肯定していただけたととって構いませんか?"
"分かってるくせに聞かないで貰えるかしら?"
"それは失礼を・・・好きです。愛してますよ、栞嬢・・・"
"私もよキッド・・・Happy Birthday"
Special Thanks ユエ様