コナン&まじ快
□もう一つの贈り物
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「いらっしゃいボク、探し物?」
「うん!お母さんの誕生日なんだ。お父さんがどうしても時間が取れないから僕に任せるって!」
「そうなの偉いわね!じゃあ何か気になるものがあったら声かけてね?」
「ありがとお姉さん!」
父さんと母さんが帰ったあとの始めの土曜日。
俺は一人、町のアクセサリーショップへと来ていた。
母親の誕生日なんて真っ赤な嘘、この姿でこの店にいるのに無理やり理由をつけただけだ。
母さん達と夕食を共にしたあの日からずっと、俺の脳内を占めるのは栞の耳元を飾るピアスの事ばかり・・・
俺だって今までアクセサリーなんて贈ったこともないのに、黒羽に先を越されたようで無性に悔しかった。
ざっと店内を見渡して、目についたのは一つのブレスレット。
作りはいたってシンプルだが、互い違いに交差されたイルカが水晶を抱え、飾りを中心に繋げられたチェーンはとても凝っていて、"栞が好きそうだな"なんて見た瞬間思ってしまった。
そこで気になったのは飾りの横につけられた銀のプレート。
ワンポイントの飾りを邪魔する事無くつけられたソレはとても小さい。
指でつまみ裏表を確認してみるが、店の刻印も何も無い只の銀の板だった。
「お姉さん、これってもしかしてメッセージとか名前とか刻印してもらえるタイプ?」
「あら、よく分かったわねボク!ブレスレットだから凄く小さいけど、半角アルファベットで45文字までなら入れられるの。
パパの名前入れるのもいいかもしれないわよ?」
「じゃあこれにする!」
「OK!じゃあこの紙に、刻印したい内容を書いてね」
「うん!」
手渡された用紙に、サラサラとペンを走らせる。
始めこそなんと書こうか・・・なんて考えていたけれど、紙を前にした瞬間、自然と手が動いていた。
書きあがった紙を店員のお姉さんへと手渡すと、至極楽しそうな顔をされ、流石にちょっと恥ずかしくなる。
無意識に書いた一言だけに、今更ながら顔に熱が篭ってしまった。
「え、えと、パパがよくママに言ってるんだ。だからソレがいいかなって・・・」
「かっこいいわねー、お父さん。絶対お母さん喜んでくれるわよ!じゃあちょっと待っててね」
「うん、宜しくねお姉さん!」
暫くして奥から戻ってきた店員に、刻印されたプレートの確認をしてソレを包んでもらい、お金を払い商品を受け取ってその店を後にした。
買ったブレスレットの包みをポケットに入れ街を歩く。
"買ったのはいいけどなんといって渡そうか・・・"なんて思案していた時だ。
車道の反対側を歩く見慣れた顔・・・そしてその横に居た人物の存在に苛立ち、近くの信号が青になった瞬間駆け出した。
談笑しながらのんびりと歩く二人を追いかけ追いつくと、後ろからその手を引いた。