コナン&まじ快

□The first date
2ページ/6ページ


「さてどうすっか、まず修理行くか?」

「うん、折角のデートだもんね。早く用済ませて快斗とゆっくりしたいし!案内、お願いしま〜す!」

「了解!」



ったく、なんで栞はこう嬉しくなる事を言ってくれるかな!

デートという事実だけでも相当なのに、俺とゆっくり楽しみたいと満面の笑顔で言われれば舞い上がるなと言う方が無理ってものだ。

繋がれた手の暖かさを噛み締めながら栞へと笑い返しその手を引く。

堪らずちょっと力を込めて握ってみれば、栞もまたそれに返すように俺の手を握ってくれた。

嬉しくて顔がにやけるのはもはや止められず緩みっぱなしだ。

けど、そうやって俺が楽しそうにしているのを見て、栞も嬉しそうに笑ってくれるから我慢なんてしないことにした。

談笑しながら歩んだ先に見えてきた一軒の店。

文具用品店というよりはちょっとしたアンティークショップのような佇まいで、今では珍しいハンドメイドの筆記具を作っている店だ。

今まで通り過ぎるだけで入ったことはなかったが、その存在を記憶の隅に入れておいてよかった。

お陰でこうやって栞とデートできてんだしな!



「へー、随分レトロなお店だねぇ・・・」

「だろ?栞の万年筆って大量生産品には見えなかったし、こういう店の方がいいかと思ってよ」

「え・・・?私、快斗に万年筆見せたっけ・・・?」

「へ?・・・あっ・・・!!」



やべ・・・、考えてみたら栞が万年筆を持っていたのを見たのは、あのキッドとして出会ったあの日だけだ。

あれから調子が悪いと言っているのだし、ましてや学校で万年筆なんて使う事はない。

焦りながらも、なんとかいい訳を頭の中で組み立てる。

そして思い出す快斗として始めて逢った日の喫茶店。

彼女が俺にくれた本を出す際に目に入った皮製の手帳・・・それの背に留めてあったペンは確かあの万年筆だった。



「ワリィ、あの喫茶店で鞄に入ってたのが視界に入っちまってさ。高そうな万年筆だったから印象に残ってたんだよ」

「あぁなるほど。でも凄いね、そんな一瞬の事覚えてるなんて・・・」

「高校生が万年筆なんてあんま使わねーだろ?だから覚えてただけだって」

「あはは、確かにね・・・さ、はいろっか」



何とか誤魔化せたようで一安心。

栞の手がドアの取っ手に伸び開かれる扉。

カランカランと鳴るベルの音が見に心地よく響くと、無人だった店内に、奥の部屋から一人の老人が顔を覗かせた。



「おや、こりゃまた随分お若いお客さんだ」

「こんにちは御主人、万年筆の修理をお願いしたいのですけど見ていただけます?」

「物にもよるが・・・まぁ見てみようかの」



黒い保護用の布がかかったトレーが栞の前に差し出されると、鞄の中から出されそこに置かれた万年筆。

それを目にした店の主人は随分驚いているようだ。

手に取ったその万年筆を丁寧に分解し様子を見ていく。

そして聞こえてきたのは大きな溜息だった。



「あんたこりゃ相当掛かるぞ?」

「えぇ分かってます。物が物ですからね・・・
 金額は気にしませんので、修理可能ならお願いします。あ、ついでにメンテナンスも頼めます?」

「このパーツは取り寄せんといかんから・・・預かり修理という事で良いかね?前金制になるが・・・」

「分かりました、それでお願いします。御代はいかほど?」

「メンテナンスと修理用パーツ3点で4万8千円になるが・・・」

「分かりました。では、これでお願いしますね」



そう言って何事もないように差し出される福沢諭吉が描かれた5枚のお札。

マジでなにしてるのこの子・・・

筆記具の修理に5万円ぽんと出すとかどんな高校生だっての!

店主だって、まさかそんな平然と返されるとは思っていなかったのだろう。

その代金を受け取るのに間があった・・・

お釣りと共に渡された引き換え用の伝票を大切にしまい、ちゃんと直ると分かって嬉しいのか、にこにこと微笑みながらその店を後にした。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ