コナン&まじ快
□気障な怪盗と名探偵
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「で、どんな奴なんだ?」
「"平成のルパン"に"月下の奇術師"・・・色んな呼ばれ方があるけど、一番親しまれている通り名がある・・・」
「通り名?」
時刻00:28・・・
俺と栞は杯戸シティホテルの屋上にいた。
事の起こりはおっちゃんのところに舞い込んできた、怪盗捕獲の依頼にその怪盗からの予告上・・・
こんな時間に出かけるとなると、栞の家に泊まりにいくという簡単で一番良い方法をとった。
夜中にこっそりと出かけるのも帰るのも大変だから手っ取り早い。
実際栞の家から堂々と目的地に出かけられるので俺も楽という訳だ。
ロケット花火を仕掛け準備を整えながら栞の話を聞く・・・
何故今回に限って栞がいるかと言うのも、前に栞の家で見かけた犯罪ファイル。
そこに確かに今回の目的の怪盗のものがあったはずだ。
けれどそれを思い出したのが出かける時間ギリギリであったから、予告時刻までにそいつの話を聞く為、詳しいであろう栞を無理矢理一緒に連れてきたのだ。
「怪盗1412号・・・とある若手小説家が番号を洒落てこう読んだの。"K・I・D"・・・ってね」
「KID?」
「そう、怪盗キッド・・・優作さんてばほんと洒落てるわよねー」
「って父さんかよ!?」
「そ・・・さて、それよりも・・・待ち人来たれり、かしらね?」
「っ・・・!?」
栞の言葉に後ろを振り向く・・・
そこに降り立つ純白は、何もかも見透かしたような不敵な笑みを浮かべていた・・・
モノクルと逆光で顔はハッキリしないが意外と若い。
さてどう切り出そうかと構えていれば、以外にもそいつの方から話しかけてきた。
ただし俺ではなく、栞へと近づきながら・・・
「これはこれは・・・随分と麗しいレディがいらっしゃいますね・・・何故このような場所に?」
「あら、こんばんは・・・。私は只の付き添いよ?この子のね」
「このような時間に・・・ですか?」
「えぇ、どうしてもとせがまれて。私の意志ではないのよ?信じてはいただけないかしら?」
一瞬のやり取りだった・・・けれど俺はその二人の様子を見ている事しかできなくて・・・
その怪盗の存在も勿論なのだが、何よりもその怪盗へと応対する栞の余裕の態度に驚いた。
ずっと一緒にいた俺でさえ見た事のない笑みを浮かべ、過去その口からは聞いた事のない口調はまるで別人のようで・・・
「いえ、貴女がそう仰るのならそれは真実なのでしょう。では、彼の方に聞くとしましょうか」
「私はただの傍観者、そうしてくれると嬉しいわ?」
「貴女とはもっと別な場所でお逢いしたいものですね・・・」
その瞬間・・・栞の手を取りその甲に落とされるキス・・・
栞の話にとても気障な怪盗だとは聞いていたが、まさか平然とそんな事をするとは思わなかった。
それに何より、それを気にも留める事無く受け流している栞・・・
だがそんな時間の空白があったおかげか、先ほどまで煩いほど脈打っていた心臓は大分収まり、目の前の怪盗と落ち着いて向かい合える。
栞の元から離れ、俺の近くへと歩み寄ってくるそいつを感じながら、用意しておいた花火へと点火した。
「よぉボウズ、何してんだ?こんな所で・・・」
火薬に火がつき、細く甲高い音を立てながら夜空に咲く1つの花・・・
一際大きい音を立て、美しい花弁を撒き散らしながら夜空を照らす一瞬の光・・・
「花火!」
栞は邪魔にならないようにと思ったのだろう、屋上のドア近くへと移動し壁にもたれ視線だけこちらへ向ける。
さぁ・・・大捕り物の幕開けだ、怪盗キッド!