コナン&まじ快
□傷だらけの告白
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「・・・っ、キッド・・・キッド、快斗!!しっかりして、快斗!!」
いつもなら純白で眩しいほどの存在を示すそれは、紅く・・・紅く染まっていた・・・
私はいつも道り書斎で原稿の執筆をしているはずだった。
普段なら意識はその世界に入り込み、現実に戻ってくるまで相当の時間を要するはずなのに、今日に限って入り込むことが出来なかった。
何故か意味も無く胸に湧き上がってくる不安・・・
今日その時間が予告日であったことは勿論知っていた。
それに嫌な予感がしていてもたってもいられず・・・予告時間になったのを見計らって家を出た。
手元には念の為と快斗用の着替えを入れた鞄も持って・・・
今日の予告現場から家までの道を逆走し、差し掛かった細い路地。
いつもなら気にも留めないその場所が妙に気に掛かって、なにより呼ばれている気がしてゆっくりと足を踏み入れた・・・
奥へ奥へと進み、もはや道路からは何も見えないであろう場所まで来て、そして見つけた。
壁にもたれて座り込み、肩口から真紅に染まるその人を・・・
「ひどい怪我・・・けど救急車はまずいわね・・・」
キッドとしての正体なんて服を脱いでしまえば分からないから問題は無い。
けれど怪我の理由を問われればまずい事になる。
見た限り肩に銃弾を貰ったようであるし、高校生が銃の弾傷を受ける状況なんてどう理由をつけろというのだ。
しかしこんな寒い場所に長時間いては快斗の体が持たない。
まず血を止めねば危険と判断し、快斗のしているネクタイを拝借しハンカチを傷に当てて縛り上げる。
このまま移動しては目立つため、シルクハットとモノクルをとり白いスーツと手袋を脱がせ、代わりに持ってきていた男物のジャンパーを着せ担ぎ上げた。
なんとか表通りまで出てタクシーを拾う。
タクシーの座席シートに血がつかないよう気をつけながら、"熱があるのに無茶して倒れちゃったんですよ"なんて運転手を誤魔化しながらマンションまで辿り着いた。
塗れた服が体温を奪っていく為それを脱がせ、自室のベッドへと快斗を寝かせる。
素人目で不安は否めないが、無駄に培ってきた知識にはやはり助けられた・・・
肩の傷は背の方からも血が溢れてきている、貫通射創で幸いした・・・
中に弾は残っていないと判断して、傷口からの感染症を懸念し念入りに消毒。
新しい布を当て再度縛る。
出血の量は多いが動脈は傷ついていないだろうから恐らく大丈夫だろう、そう信じたい。
冷え切っていた体はいつの間にか熱を持ちはじめていた・・・
快斗の汗を拭いながら、血止めに縛ってあるのを緩めたり絞めたりを繰り返す。
不安で不安で仕方なかった。
出会ったあの日からいつも私を笑顔にさせてくれた貴方・・・
いつの間にか自分の中で大きくなっていたこの存在が消えてしまったらと考えてしまえば、溢れてくる涙を止めることなど出来なかった・・・
「快斗・・・目を開けて・・・」
横たわるその手をやんわりと握り締め、感じられる息遣いが穏やかになるのを感じられた頃・・・
それは丸二日過ぎ、窓の外は綺麗な夜空が広がっていた・・・