アルファルド

□12話目
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―12、少しだけの前進―





もうすぐ星見会が始まる時間。漆は1人、ベンチに座りボーッとしていた。

すると……







錫「漆さん!やっと見つけた、迎えに来たよ」

そう言いながら、錫也が笑いながら近づいてきた。







錫「みんなはもう先に行って場所を取ってるんだ」




「…」

漆はジッと錫也を見ると…










「君って………マゾ?」





錫「はい?」









そう聞いた。錫也はよく分からないといった表情で漆を見てから返事をする。




「…なんで、そんなに私に構うの?嫌になるでしょ…いい加減」


錫「…?(……嫌って…ほしいのか?)」

































俺が“苦手”だから、




俺への対応に困ってる?
















怒ってるっていうよりも、








「…、……」




















…本当に、


困ってる?
















錫「なんでって…言われると…」














きっかけは…















錫「初めて会ったあの夜、漆さんが……泣いていたから、かな」



「……!、は…?」




















漆さんの反応はおかしくはない。



確かにあの夜、漆は涙を流していたわけではない。

星を見て、ただ…話しただけ。









でも俺には…













錫「泣いている風に見えたんだ……………漆さんの…、…心が…」










だから俺は……












錫「少しでも漆さんの力になりたくて……なんだか凄く…君に惹かれたんだ。……だから…」


「…っ………」






漆は錫也から視線をずらし、少しだけ…焦った表情をみせた。











「泣いて、ない。あれは………違う…」



























錫「…そう、だな…………ごめん……振り回しすぎちゃったな」


「…」





漆の言葉を聞いた錫也はそう言うと、1歩後ろに下がった。

そして、いつものように優しい笑みを浮かべる。


















錫「悪い、そんなに困らせたかった訳じゃないんだ、本当に…、………突っ走りすぎちゃったな、流石に…」


「……、…」





錫「安心して?もうまとわりつかないから。あっ…でもせめて今日の星見会は一緒に見ないか?実は…もうすぐ羊がアメリカに戻ることになってて…」


「…………」

錫「だから、思い出にさ………じゃあ俺!先に行くから!!屋上庭園に来れば俺たちの場所すぐ分かると思うんだ!………じゃあ、また後でな!」







錫也は用件を言い終わると、その場を早歩きで立ち去った。


その目は、どこか泣いている風にも見えた。
































やっぱり……








無理矢理はよくなかった。



苦手だって言ってるのに、


勝手だった。









反省、












っ、泣きそうだ。












くいっ

錫「!!」






いきなり服の裾を掴まれて、錫也はゆっくり振り返る。



そこには……………

















「……、…変なトコで、変に引かないでよ……っ…狡いよ」



錫「え」






拗ねたような顔をした、漆がいた。





「君に、優しくしようとか思ったことはないけど、痛めつけたいわけじゃ……ない、別に…そんな気はないの………、ただ…」








錫「…」


「…、………っ、訳分かんないよね…」




















あぁ…


この人、











何 か あ る











やっぱり、








心の底に根深く…

冷たく…






だから、



そんなに不安定なのか?










悲しげに…



不安げにして………













俺を惹き付けるのか?














スッ



「分かったよ」

錫「!」






錫也が漆の頭に手を伸ばそうとすると、顔をそらしながら、いきなりそう言った。



「…分かった。振り回せばいい。勝手に…」




錫「それって」

「知らないからね……優しくなんて……しないからねっ」








漆はそう言って、また拗ねたような顔で、錫也を見た。


その頬は…少しだけ、赤く染まっていた。





















“振り回せばいい”



(〜///今日!楽しみだな…星見会っ)
(別にっ…)
(俺、たくさん夜食作ったから、みんなで食べような!!)
(煩い!落ち着いてよっ犬か!君はっ)
(ごめんごめん!)
(……もう、君はちょっと……他人に甘すぎるよ…)
(…ハハ、そうかな?)

――――――――――――

あとがき

ちょっとずつ…本当にちょっとずつですが、2人の距離は縮まっている………ような気がします(笑)


気長にお待ちください^^;




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