アルファルド

□10話目
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―10、素の彼女―





漆はやや不機嫌そうに、錫也は嬉しそうに月子たちのいるであろう場所に行くと…













「…………」



錫「哉太!!なんで怪我してるんだ!」

哉「なんでもねーよ」



錫也がその場を見回せば、自分がここを去ったときよりも明らかに増えている、最早屍と化した男たちの人数。

あらかた仕返しに来た仲間を哉太が返り討ちにしたのだろう。








「(屍が、増えてる…)」



羊「とりあえず、蘭姫のことは月子から聞いたよ」


「!……そう」

哉「そんなことはどーでもいい!!……おい蘭姫!!!お前どの面下げて来たんだよ!………だ、大嫌い…なんだろ!!!?明日の星見会は」






「行かなくていい?」


キラッ






哉「な!」

錫「おいおい!!それはないだろ!」



またもやキラッという効果音が聞こえてきそうな爽やかな笑顔を見せ、そんなこと言う漆。


錫也は急いで漆が帰りそうなのを止めた。







キラキラッ


「でもホラ…私勉強したいし…ね?」



錫「い、息抜き!星を見ると生き抜きになるだろ?(せっかく近づけたのにここで今までの苦労をパーにしてたまるか!)」











月「でも…」


それでもまだ帰ろうとする漆を見た月子が、言葉を零した。









4人『…?』



月「“守る”って……」

「!」










月「言ってくれたよね?………その言葉は、私たち自身だけじゃなくて………約束にも…有効、なんじゃないかな」


月子は笑顔でそう言った。まるで、漆から断る権利を奪うように…



すると漆は………






























「ちっ」












哉「え゛……」

羊「舌打ち……」

月「ふふ」

錫「漆さん…!」












漆は錫也以外の人がいるのにも関わらず、素の自分を見せ、舌打ちまでしたのだ。


さっきの爽やかな笑顔はどこへ行ったのやら。






「分かったよっ行けばいいんでしょ!星見会っ……言っとくけど…私の意思じゃないからね。文句なら……そのオカンに言って!」

















哉「…………ぶっ」


錫「オ…オカン……」




羊「蘭姫って……そんなキャラだったんだ…」





「もう気を遣うのも面倒っていうか………ちっ、バカらしくなった!」







漆は、若干の怒りのオーラを放ちながら、その場を立ち去った。









羊「なんか今…哉太が2人いる白昼夢見たよ…?」

月「ふふっ、いい夢だね」




哉「そりゃっ俺が蘭姫と似てるってことか!」



漆の素を見たことのなかった哉太と羊。

哉太は羊の呟きを聞いて、そう怒鳴っていた。








錫「俺、ちょっと行ってくる!」


錫也は走り出しながらそう叫ぶと、漆の後を追っていった。



***



錫「漆さん!漆さん待って!」




「…だからっ!名前で呼ばないでって……」

漆が振り向けば、そこには手を差し出す錫也の姿があった。
























今日の漆さんは、





今までの漆さんより、



ずっと…








近くにいるような気がして、























嬉しくなる。












だから…























錫「…星見会楽しもうな!!それから…………これからも…宜しく」







「…っ……、…」



錫也に笑顔でそう言われた漆は、頬を赤く染め、バツが悪そうに顔を背けながら……




















「…絶対、やだねっ!!!」




最後には、怒りマークがついたような笑顔で、そう言った。



(…よ、宜しく!!!)
(やだねっ)

――――――――――――

あとがき

哉太と羊にも素をみせた漆さん(*^^*)

ちょっとずつ春組の中に溶け込みつつある漆さんでした(笑)





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