アルファルド

□6話目
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―6、仮の親子―





場所は保健室。漆は1人、そこにいた。そして、そこにはもう1人、漆と一緒にいる人がいる。








琥「おい漆、ここは病人が来るところで、健康体のお前が来るところじゃない」



「いいじゃん、……子どもがお父さんに会いに来ちゃいけないの?」

いつもと違い、口調が砕けている漆。表情も、いつもの薄い笑いではなく、どこか自然な感じである。




琥「お父さんって言うな、俺はお前の仮の保護者になってるだけだ、決してお父さんじゃない」


「はいはい、分かってますよー…」



漆はそう言うと、保健室にあるベッドに寝転んだ。






琥「ったく……で、何しに来た?」



「………私、天文科嫌」




琥「は?だって俺がこの学校勧めたときに天文科に入りたいっていったのは漆…お前だろ?」


琥太郎が呆れたようにそう言うと、漆はふて腐れたような顔になり、黙ってしまった。







琥「……成る程、なんかあったな?」



「……」

琥太郎は全てお見通しのようで、小さく笑った。













「嫌なやつが…いるんだ」


琥「嫌なやつ?」

「…………私のことを知ろうとするし…構うし…話しかけるなって言っても話しかけてくるし………正直面倒」




それだけ言うと、漆は布団を被ってしまった。琥太郎は、そんな漆を見て、小さくため息をつく。


そして…

















琥「良かったな」


「!!!」





そう呟いた。それを聞いた漆は勢いよく布団から出て、琥太郎を睨み付ける。










琥「いいじゃないか………お前を過去から引っ張り出してくれそうで、俺は逆に安心したよ」





「っさい!!何それ!!…私は別に…っそれに…す」




キーンコーンカーンコーン












「……」




チャイムが、漆の言葉を飲み込んだ。

漆は言い直すことはせず、無言になる。









琥「……漆、3時限目も終わったぞ」



「……………」

それでも漆が黙っていると………

















ガラガラッ



錫「失礼します、漆さんいますか?」


「!…」







ドアを開けて、錫也が入ってきた。どうやら漆に会いに来たらしい。

漆は錫也が来たことに気づくと、表情をいつものものに戻した。





琥「(…困ったやつだな)東月、蘭姫ならそこだ、元気だから連れてけ」



錫「!、はい」

















「………なんで来たの」


漆は錫也の顔を見るなり、睨み付けて、そう言った。





錫「なんでって………1時限目から欠席してて心配だったし」


「はぁ………もうしないでくれる?後、名前も…」







錫「!、漆さん待っ……………行っちゃった…」




その場に残ったのは、錫也と琥太郎だけ。

錫也が仕方なく保健室から出ていこうとすると…










琥「東月……根気強く行けよ…」




錫「!……はい、ありがとうございます、先生」









そう言うて、錫也は漆を追い、保健室から出ていった。





琥太郎は、ふと漆が寝ていたベッドに目を向けると…



















琥「漆……もう、過去を見ずに、未来に目を向けるんだ…」


そう、呟いた。





















そうじゃないとお前が……



壊れてしまう。





――――――――――――

あとがき

色々あって、漆は琥太郎に引き取られたため、今漆の親権は琥太郎にあります。

そのため、あながち琥太郎が漆のお父さんっていうのは間違っていません(笑)





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