アルファルド
□2話目
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―2、現実の彼女―
漆の自己紹介が終わると、今度は天文科の担任である直獅が嬉しそうに話し出した。
直「いやぁ、土萌といい蘭姫といい…うちにはたくさん転校生が来てくれて嬉しいなぁ!!しかも今度はこの学年…いや!学校で2人目の女子だ!!みんな仲良くしてくれよな!」
錫「………蘭姫、漆…」
直獅が話している途中、錫也はずっと漆を見ていた。
哉「?……どうしたんだよ錫也、さっきだって声あげて…」
錫也と席の近い哉太は、すぐに錫也の様子がおかしいことに気づいた。
しかし錫也は哉太の問いには答えない。
錫「………(間違いない、この前の…彼女だ)」
錫也はそう確信をすると、この後どうしようか、そのことをずっと考えていた。
その間哉太は、しばらく錫也の心配をしていたのだった。
***
羊「え!錫也は彼女と知り合いなの!?」
月「ズルい錫也!私だってお友達になりたいのにっ」
錫也は幼馴染たちに、自分は漆を知っているかもしれないと言った。
まぁ、まだ完全に自分の中では確信していても、本当にそうという証拠がないため、嫌われているところまではまだ言ってないのだが。
錫「で、でも、俺の記憶違いかもしれないし…」
哉「…じゃあ俺がアイツを連れてきてやる!!」
錫「!、哉太っ」
連れてきてやる、と言った哉太を急いで止める錫也。
例え転校生があのときの彼女だったとしても、錫也は彼女に話しかけないで、と言われている手前、連れてきてもらったとしても、その場の空気が悪くなることくらいは、錫也自信が理解していた。
哉「あ?、なんだよ?」
月「?、錫也?」
羊「どうかしたの?」
錫「……っ、い…いや…ちょっと……俺、喉乾いたから購買部行ってくるな!」
錫也は、珍しく目を泳がせながらそれだけ言うと、急いで教室から出ていった。
幼馴染たちは、いつもと違う錫也の姿を見て、心配しながらも、購買部に行って錫也を見送ったのだった。
月「……どうしたのかな、錫也」
羊「ちょっと様子が変だよね?…やっぱり彼女が関わってるのかな?」
哉「…………やっぱり俺、アイツんとこ言って話してくる!!」
月「え!哉太っ」
羊「ちょっと待ってよ!」
哉太は月子と羊の声も聞かず、ずんずんと漆に近づいていく。
そして…
哉「お……おい!お前!!」
「……、…?私…?」
漆に話しかけた。
突然話しかけられた漆は一瞬驚いたように反応したが、すぐにあの薄い笑顔に戻る。
「初めまして」
哉「///お、おぅ」
羊「あ、哉太が照れてる」
哉「う、うっせ!照れてなんか……」
「鳥の巣さん」
哉「な!!!」
羊「ぶっ…」
月「あはは…っ」
照れ顔だった哉太だが、漆の鳥の巣発言を聞いて、一気に豹変。
哉「と、鳥の巣ってなんだよお前!!失礼にも程があるぞ!!!」
「あぁ、ごめんなさい。つい…」
月「蘭姫さんて面白いね!……私夜久月子!!で、…こっちが土萌羊君!…今鳥の巣って言われて怒ってるのが七海哉太!」
哉「月子まで!」
羊「ナイスだよ月子!」
月「宜しくね!蘭姫さん!」
そう言って、月子が手を差し出せば、漆はまた薄く笑ってその手を取った。
「宜しく」
そして、そんなみんなの様子を廊下から見ている人が1人。
それは…
錫「………漆さん、他の人には普通、だな…」
購買部に行った………はずの錫也だったが、実はただ廊下に出ていただけ。
そして、ずっと漆を見ていたのだ。
錫「…これからどう接するか…向こうは、驚いてなさそうだったけど……………はぁ……せめて違うクラスだったらもっとゆっくり」
隆「あっ、ほらアイツだぜ!おーい転校せーい!!」
弥「ほ、本当に女の子なんだな///」
颯「クスッ、顔が赤いですよ?白鳥君…」
違うクラスの生徒である隆文、弥彦、颯斗が、教室にいた漆を呼んだ。
どうやら通りかかったついでに挨拶に来たらしい。
錫「…」
それを自然と目で追ってしまう錫也。
隆「俺、神話科2年の犬飼隆文!」
弥「お、俺…は……星座科2年の白鳥弥彦…です///」
颯「僕は犬飼君と同じ神話科で2年の青空颯斗です。一応生徒会の副会長を務めています」
「私は天文科2年の蘭姫漆、宜しく」
漆は、また薄く笑ってそう自己紹介をした。
隆文たちは楽しげに漆と会話を始める。
隆「東京から来たんだってな、どこ校から来たんだ?」
弥「東京にいた方が後々受験とか有利そうだよな……っ、でも!!ここは星が良く見えるんだぜ!!」
颯「2人とも?質問は1つずつでないと、蘭姫さんが困ってしまいますよ?」
颯斗に笑いながらそう言われた2人は急いで悪い、と謝る。
「親の都合だから仕方ないよ、それに気にしてないしね」
錫「……………」
“教えたくない
教えることなんてない
何1つ
私以外ならなんでもいい
現実はつまらない
…くだらないよ”
錫「……どうして、俺にはあんな風に言ったんだろうか…」
錫也は廊下を歩きながら、ぐるぐると前に漆に言われたことを考えていた。
錫「現実の漆さんは苗字があって、親もいて、同じ制服を着て、同じ場所にいるのに………」
錫也は、ゆっくり教室に戻ると、自分の席に座った。
そして、それと同時に…
錫「……(嫌われてるから、かな…)」
1つの答えが出た。
窓の方を見ていた錫也は気づかない。
その姿を…
「…………」
漆が見ていたことを。
(どうするかな…アイツらにもちゃんと言わな)
(ねぇ…)
(!!!っ、漆、さん)
(話あるんだけど、放課後、1人でこの前のところに来てもらえる?)
――――――――――――
あとがき
なかなか漆さんと絡めない錫也さん(笑)
漆さんは一応取り繕うのは上手いので、クラスや他のクラスの人とは溶け込みつつあります(*^^*)
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