アルファルド
□1話目
1ページ/1ページ
まさか、と思った。
夢だ、と思った。
「初めまして、蘭姫漆です、東京から来ました、どうぞ宜しく」
そう言って、薄く笑った転校生。
彼女、蘭姫漆は、俺が初めて会ったときと同じ顔をして、そこにいた。
錫「君は!!!!」
―1、最悪な出会い方―
俺の名前は東月錫也。俺は今日、珍しく1人で星を眺めていた。
月子は生徒会が忙しいって言ってたし、哉太は体調が悪そうだったし、羊は夕食を食べ損ねたから食堂に行くって言っていた。
だから今日は、1人で星を見に来たんだ。
錫「やっぱり星はいいな、見ていて癒される」
「好きなの?」
錫「!?」
俺は突然声をかけられたものだから、驚いて声も出ない。
俺が急いで振り向けば、そこには、薄い笑みを浮かべ、まるで星のない夜空のような色をした漆黒の長い髪と瞳を持つ女の子が立っていた。
「星、好きなの?」
錫「え、あぁ…星は、好きだよ、というか…この学園の生徒は大抵星好きだと思うけど…」
俺がそう言えば、彼女はそう、と言って、夜空に視線を移した。
彼女の服装は、真っ白な長袖と濃い色のジーパンというとてもラフな格好。一体彼女は誰なんだ…?
「…星か、星なんて……どれも同じに見える」
錫「え?……それは」
「春の大三角形ってどれ?」
違うよ。……って言おうとしたけど、彼女の方が早かった。
なんだ、やっぱり星には興味があるのか。
そんなことを思いながら、俺は彼女に春の大三角形について語った。ついでに、春のダイヤモンドについても教えてあげた。
「……ありがとう、本当に星が好きなんだね」
錫「……君には?…………君にはないのか?…好きなもの」
気づいたら俺は彼女にそう聞いていた。先に名前を聞けば良かったものの、なぜかそれを先に聞いてしまったんだ。
「…私は………………、………薄…」
錫「///」
彼女が、最初とは比べ物にならないくらい、とても綺麗な笑顔を浮かべてそう言ったから…俺は思わず見惚れてしまった。
錫「///っ…薄……、…俺も好きだよ、薄。お月見のときにはいつも用意するんだ」
「そう」
コロッ…
錫「?何か落ちたぞ………指輪?」
彼女が動いた矢先、彼女のポケットから指輪が落ちた。それを俺が拾って返そうとすると…
「本題、入ろうか…そろそろ…」
錫「!」
返す前に、彼女は俺の言葉も行動も喰うと、そう言って、ジッとこっちを見た。
その表情は、最初の薄い笑顔に戻っていた。
「聞きたいこと、あるでしょ?私も最後まで聞かれずに終わるとは思わない。…………“誰なんだ?”って」
確かにそれは俺も気になることだったから何も言い返さなかったけど、少し驚いた、まるで、俺の心を読んだみたいだったから。
俺が一歩彼女に近づくと…
「何がいい?」
俺は一瞬そう聞かれた意味が分からなかった。
「なんだったらいい?知りたいんでしょ?私のこと…なんだったら満足する?……私は、私以外ならなんでもいいよ」
錫「どういう、意味だ?」
「別に……?…意味なんてないよ。ただ……、…………遠い親戚でも、生き別れた姉妹でも、時空を超えてきた恋人でも、幽霊でも、魔法使いでも、宇宙人でも、星の使いでも、なんでもいいの」
錫「…」
「なんだって…現実よりかは面白い。幻想は、楽しくて…夢があって、希望があって……現実はつまらない。くだらない…」
彼女の表情が……
「………くだらないよ」
酷く、歪んだ笑みに変わった。
なんだか…
錫「………………笑ってるのに、悲しそう、だな」
「!……」
もしかして君は…
「……現実が悲しいのか?」
孤独なのか?
錫「自分が…」
「…そんな、綺麗なもんじゃない……」
彼女の声が、空に響いた。
「もう遅いから戻るね。…………………あ………もし、次会うことがあっても……声、かけないで」
錫「!?、それって」
「教えることなんてないから。何1つ…っ、教えたくない」
錫「どうしてっ!?」
っ、待ってくれ!!
俺は、君のことが…
「…嫌だ。君は、嫌い……」
錫「っ」
「君も、星も、薄も、何もかも………くだらない!」
ダッ!
錫「!、待っ…………」
彼女は、それだけ言うと、走ってどこかへ行ってしまった。
っ…
どうしてだろう。
会ったのは初めてだったけど……
今の俺は、
酷く…
彼女に惹かれている。
(せめて、もう一度っ…)
――――――――――――
あとがき
ちょっと遅れの2つ目の新連載スタート(*^^*)
ちなみにこの話は管理人が好きな、とある少女漫画がベース(というかその漫画のパロ)になっています。
そのため、もしかしたらなんとなく知っている人もいるかもしれませんね(´`)
ともあれ、謎だらけのヒロイン、漆さんですが…最後まで宜しくお願いします!!
.