小説
□修羅場
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長年に渡って蓄積されたストレスが、長沢をおかしくしていたのだった。
「撃てー!!撃ちまくれーーー!!」
「あの、艦長…ここは逃げるべきでは??あっちは艦隊ですよ?確実に負けますよ。」
「そうです、艦長!ここは絶対に逃げるべきです。」
「いや、勝てるね!私は今やらないと勝てないんだ!!」
長沢は士官の正しい意見に反発し、更に意味不明なことを言い出した。
「艦隊のど真ん中に突っ込め!そこで一斉掃射だ!!」
「………。」
「どうした??艦長命令だぞ?命令の聞けないやつは任を解く。」
「……!!」
「なんだとこの野郎!!」
「お?やるのかね、小尉」
「殺ってやるさ!死ね!!」
バンッ!!
いつエイリアンが襲ってきてもいいように腰につけている護身用の拳銃が今、味方のために放たれた。
バタッ…
長沢は椅子から転がり落ちるように前のめりに倒れた。
「貴様、何をしてるんだ!艦長を殺すとは…」
そう言って隣にいた士官は艦長を撃った士官を殴った。
そして別の士官が殴った士官を拳銃で撃ち貫いた。
「お前は艦長の意見に賛成なのか!?」
「うるさい!!お前こそどうなんだ!」
「なんだと!?うるさいとは何事だ!!このバカ野郎!!」
「バカはお前だ!!」
…この連鎖はずっと続いた。止める者は誰もいない。全員がストレスにやられていた。
そしてこの様子は、異星人に筒抜けだった。通信士が、誤って通信回線を開くボタンを押してしまっていた。
これを見た異星人は、地球人を今まで以上に軽蔑した。
「このような哀れで危険極まりない下等生物が宇宙に進出してはならない。これを撃墜後、直ちに地球人一掃だ!」
こうして『武蔵』は一分足らずで撃破され、異星人はワープで、ものの数分で地球に着いた。
異星人は、地球人の応戦も虚しくあっという間に地球を侵略してしまった…。
それから数年後、地球上には地球人の姿は見られなくなったという…。
《あとがき》
例外もいるが、普段の人類は確かに温厚である。しかしストレスまみれになった人類、いや、全ての生物は狂気と化する。
そして探査艦『武蔵』の人々はその一例でしかなかったのに、異星人は彼らこそが地球人の本性だと思い、地球人を危険視し、全滅させたのだ。そもそも、ストレスを発散できる場所を無理やりにでも作らなかった軍部が悪い。しかし結局は運がなかった、ということになるだろう。