小説

□修羅場
1ページ/2ページ

私はこの宇宙探査艦、『武蔵』に長年勤めている長沢だ。よろしく。

この『武蔵』は全長約250メートルの特大艦で、かの有名な戦艦『大和』をも凌ぐ大きさだ。

そしてこの探査艦は、主に宇宙探索を目的に開発され、出航してからはかれこれ18年経っている。

しかし、未だにこれといった惑星は発見できていない。宇宙人とも遭遇していない。

そして探査艦には、一応武器も装備しているが、果たして地球の武装がこのディープスペースで役にたつのかどうか、溜め息がでるばかりだ……

と、長沢は今までのことを振り返り、誰に言うでもなくこんな独り言を呟いた。
それもそのはず。艦内にはレジャー施設など、ストレスをうまく発散する場所が全く無いのだ。軍の発想だから仕方がない。仕方がないが、せめてボクシングジムだけでも欲しかった…
そう思いつつ、長沢はブリッジに向かった。最近人工重力が重く感じられるのは気のせいだろうか…あとで機関部に言っておくか。

高速エレベーターに乗った長沢は最上階のボタンを押し、ドアが開くのを待った。

全く、宇宙には地球人しかいないんじゃないのか。もう疲れたよ。あまりにも退屈すぎる…何でもいいから起きてくれないかな…

まさにそう思った瞬間だった。爆発音と共に艦が大きく揺れ、警報とアナウンスが鳴り響いた。
「各員は戦闘配置について下さい!!繰り返します、各員は戦闘配置について下さい!!」

長沢はそれきたと思い、ようやく開いたエレベーターの扉から勢いよく飛び出した。

そこはすぐにブリッジになっていて、階段を10段降りて右に行けば艦長席がある。前方のメインスクリーンには、敵艦隊が映し出されていた。

それを見た長沢は、恐怖心よりも逆に楽しみだと思った。そして、艦長として堂々と艦長席に座った。久々に艦長の威厳を取り戻したような気がする。

すると、敵から地球語に翻訳された警告が寄せられた。
「貴様らは我々の領土に許可なく侵入した。直ちに排除する。」
長沢は戦闘をしたくてウズウズしていたが、一応反論してみた。
「待て!知らなかったんだ。我々地球人は異星人とのコンタクトを目的に…」
「うるさい!!貴様らが地球人なのはわかっている。貴様ら下等生物などに領土に侵入されただけで腹立たしいわ!成敗してくれる!」
異星人はそう言って、強制的に通信を終了した。

やはりそうでないとな…

長沢の頭は、すでに尋常ではなくなっていた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ