マガジンラック
□焦がれる想い
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恋が私を狂わせる。
君に焦がれるあまり、私は死を招く。
君を、手に入れるために。
私自身が作り上げたオペラ『ドン・ファンの勝利』の劇中、私はドン・ファン役の男を殺して入れ替わると衣装のフードを深く被って顔を隠した。
誰にも疑われずに、舞台に立つ彼女に近付くために。
歌が唇から流れ出す。
自分の欲望を封じ込めた言葉で、彼女をがんじがらめにするために。
君がいけないんだよ、クリスティーヌ。
君が私を狂わせたんだ。
その華奢で美しい体で、償うんだ。
君の、罪を。
手と指が絡み合う。
引き寄せるが突き放す。
君は私には気付いていない。
私の欲望を封じ込めた言葉を歌い、自ら私の体に触れて来る。
フード越しに伝わる体温と肌の感触。
これこそ私が望んでいた物。
その時私の正体に気付いたのか、クリスティーヌが離れようともがく。
……無駄だよ、クリスティーヌ。
もう君は、私の者なのだから……。