学園バサラ
□6月
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ただ今の時刻午後3時。私が先輩宅に到着してから1時間が経っている。
今私がいる座っている場所は、丁度背中に太陽が当たってぽかぽかしていて気持ちい場所。正座をしていてしびれてきた足をびよーんと伸ばして、数学の問題集を解いている。
隣では、成ちゃんが辞書をぱらぱら捲って古典の予習を、目の前では先輩が教科書や参考書を広げて、日本史をやっていた。
一旦、勉強をストップして集中している2人を交互に見た。左手で頬杖をついて面倒臭そうにノートに現代語訳を書く成ちゃん。眉間に皺を寄せて問題集を解いている政宗先輩。
(…うん、やっぱり似てる。さすが従兄弟だなあ。
そんでもって2人ともかっこいい)
なんてことをボーっと考える。こんな2人と幼馴染の自分がすごいと思う。
2人も今まで付き合った人何人くらいいるんだろう?それにかなり告白されていそうだし…。こんなことを考え出したらキリが無いからやめておこう。
頭から余計なことを取っ払って、シャーペンを再び強く握って数学と対決しようと意気込んだけど、
(それにしても暖か、い…)
睡魔を頭から取っ払うことはできなかった。
***
「あーあ、葉乃ちゃん寝ちゃったね。来るとき寝ないようにあんまり食べなかったって言ってたのに、結局寝ちゃってー。」
俺は苦笑して言い、タオルケットを机に突っ伏せて寝ている葉乃ちゃんに掛けた。手に力が入らなくなったひよこ柄のシャーペンは、ことんと問題集の上に落ちている。
葉乃ちゃんの目の前に座って勉強していた梵兄も、今はその手を止めて寝ている幼馴染を観察している。
「全くこいつは昔から寝るのが好きだな。
…なんか、久々に寝顔見るぜ。」
うつ伏せで髪の毛で隠れている葉乃ちゃんの顔を見るために、梵兄は前に乗り出して、顔が見えるようにその髪の毛を耳に掛ける。
そして、出てきた顔を2人で覗きこんで観察。
「葉乃ちゃんは昔と全然変ってないよねー、中身も外見も。」
「久々に会った時は、びっくりしたぜ。全然変わってなかったんだからな。
だが、前よりも可愛くなってる…。」
梵兄は顔を綻ばせて、幸せそうに寝ている葉乃ちゃんの額に唇を落とした。
「あ゛あああああ!!何やってんの、梵んんん!俺が先にしようと思ってたのに!!」
俺は梵兄の行動に素早い行動に、大声を出してしまった。さすが、手を出すのは人一倍早いに俺の従兄。
(あ、さっき呼び捨てで呼んじゃった。
後から鉄拳が頭に振り落とされることが確定したなあ)
ちょっとさっきの言葉を後悔していると、隣の寝ていたお姫様が目を覚まされたようだった。
「ん、。し…成ちゃん、大声出し、ふぁあ、どうしたの……??」
「Hey,葉乃.いいdream見れたか?」
俺が声をかける前に、梵兄が割り込んできた、チッ邪魔しやがって。
「夢なんかみてませんよ、短時間だったし
…って、私寝てしまったんだった!!うわー、寝ずに頑張ろうと思ってたのに。」
私のばかあ、と1人で落ち込んでいる葉乃ちゃん。そんなところがまた可愛いんだよなあ。
「まあ、そんなこともあるって。気持ちよかったら眠たくなるし。
それに、いいもん見れたし。」
背中をぽんぽん叩いて慰める。葉乃ちゃん最近授業中寝ることが減って、俺もなかなか寝顔がみれてなかったから、よかったんだよなあ。
俺の最後の言葉に引っかかったみたいで、いいものって何なの?、と聞いてきたが秘密ー、と言ってはぐらかした。だって、正直に言ったら2度と俺の前で寝てくれなくなりそうだし。
「何2人で騒いでんだよ。3時のおやつって訳でもねえが、休憩しようぜ。」
いつの間にかキッチンに行っていた梵兄が、お盆に紅茶とクッキーを盛ったお皿を乗せてやってきた。
「葉乃の為に作ったんだ、しっかり味わいな。」
「ありがとうございます!
先輩って料理上手ですよね、球技大会のときのお弁当美味しかったし。むぐむぐ…あ、美味しい。」
机にお皿が到着した瞬間に手を出して、クッキーを1枚取って口の中に放り込んだ。こっちも(違う意味で)手を出すのが早い。幸せせそうな顔をして、2枚目を手に取っている。
「成ちゃん、クッキー美味しいよ??食べないのー?」
そう言って3枚目をほうばる葉乃ちゃん。食べるペース早すぎでしょ…
「成ちゃん、はい、あーん。」
「あーん…
!!もぐっ…あ、うまい。」
何も考えていない状態の隙をつかれて、葉乃ちゃんが手に持っていたクッキーを俺の口に入れた。
葉乃ちゃんは満足そうな顔をして、自分が作ったわけでもないのに自慢げに胸を張って言う。
「美味しいでしょー。」
「あ、うん。」
(あーん、とか何俺恥ずかしいことしてんの?!でも、なんかやったぜ。
まあさっきの梵兄の仕返し?はできたかな…)
俺がちょっと感傷に浸っているなか、梵兄と葉乃ちゃんがじゃれあい始めた。
「おい、俺にはやってくれねーのか?
口移しだったらなおbestだ。ってか、口移ししろ。」
「何、変なこと言ってるんですか?!先輩自分でちゃんと食べてるでしょ!!さらりと強制しないでください!!
ぎゃあああ、口にクッキーくわえたまま寄らないでくださいいいいい!」
(やっぱり懐かしいや)
俺はそんな2人を眺めながら2枚目のクッキーを口に入れた。