学園バサラ

□5月
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私がSクラスに編入してから、しばらく経った。クラスにメンバーは少ないうえにアットホームな雰囲気だったので、すぐに慣れることができた。でも、1番慣れるのに時間がかかったのは授業だった。

そろそろ梅雨の時期に入りかけにはまだ早いが、そろそろジメッとしている時期に入りそうな日の午前8時57分。
私と成ちゃんは、SHRが終わるといそいそと教科書などをリュックに授業に必要分の教材を詰めて教室を出ようとしていた。

「Ha、葉乃は真面目だな。どっからそんなに授業に出ようっていう気力が湧いてくるんだよ。」

政宗先輩が出て行こうとする私の背中に向かって、呼びかけた。私ははクルリと向きを教室の方に向けて、

「私は、先輩みたいに頭良くないんで授業にでないと落ちこぼれになってしまうんです!!
留年は嫌ですから!!」

キッと睨んで成ちゃんを引っ張る。葉乃ちゃん、手首い、痛い!なんて成実の悲痛を無視して、急いで教室から出て行った。

(あー、朝からバタバタするの嫌いなのに…。今日に限ってSHR長いんだもん。片倉先生のばかあ。)

授業に遅刻しそうな原因のもとである、担任を恨みながら廊下をダッシュで駆けて少し距離がある生物室に向かった。

私が去った後の教室では、

「あはー、葉乃ちゃんは真面目だねぇ。俺様感心しちゃう。」

「俺なんかすでに落ちこぼれなのによう、葉乃はすげえな。」

「佐助、某も葉乃殿と同じように授業にでたいでござる。」

「あー、旦那はダメ。授業を壊しちゃいそうだから。」

「貴様らも、桜田を見習えばよいものを。なぜ、我が貴様らの勉強を見ねばならんのだ…。」

上から佐助、元親、幸村、またまた佐助、元就の台詞。私が出て行った、教室内ではそんな話が行われていた。

そんなことは何も知らない私たちは、なんとか授業に遅刻せずに教室に到着できた。

「成ちゃん、なんとか間に合ったね。」

「う、うん。きつかったけど…。」

授業開始ギリギリの1分前に席に着くことができ、ホッとした。もし、この授業で遅刻なんてしたら放課後の実験の助手という名の死刑に値するようなに罰を処せらるから。
え?何があるかって?…思い出すだけで涙が出てくる。

「さあ、皆さん揃っていますね。…今回は遅刻者は出なかったみたいですね。残念ですね。ククク苦…」

(最後のくってなんか違う字に見えたんだけど、気のせいだよね…)

生物教諭、明智光秀先生が私と成ちゃんを交互に見て言った。この人の趣味は、巷の噂では人体実験(錬成)らしい。私はこれが噂ではなく、事実だと確信している。つい最近の放課後に身をもって経験したから。

「では、授業を始めますよ。教科書の24ページの発生について学習しましょう。」

明智先生の指示で一斉に教科書を開く音が、教室全体に聞こえた。授業が始まり、私と成ちゃんはいつものように板書をノートに写し、先生の授業を受けた。

(Sクラスって本当に特別なんだな…。)

ボーっとして、授業システムをおさらいし始めた。

Sクラスは、学年が入り混じっているため、HR教室での授業が基本的にない。そのため、一般クラスの授業に出席して(飛び入り参加して)授業に受けたり、先輩から教えてもらったりするシステムだ。
私は、たまに先輩に教えてもらっているが基本は授業に出席している。私が、編入してきてからは心配だからという理由で成ちゃんも出席するようになった。心配症なんだから、成ちゃんは。
授業は自分が受けたいものを、やりたいだけ受ける。そのかわり、考査では必ず10番以内に入ることが落第回避の方法。とりあえず、考査が良ければ何してもいいというフリーダムなもの。

(本当に私、このクラスでいいのかな…。先輩たちなんだかんだ言って頭よさそうだし。)

ハァとため息をつき、再び授業に集中した。
あっという間に50分が過ぎ、チャイムが鳴った。

「おや、もう終わりですか。では今日はここまでです。さようなら、フフフフ…。」

なんとも怪しい笑い声を残して、先生は出て行った。

「葉乃ちゃん、次はどっか授業受けに行くの?」

「うーん、次は戻ってさっきの分からなかったところ、先輩に質問する。」

「ん、了解。じゃ、戻るか。」

私と成ちゃんは、授業道具をまたリュックに収めて再びSクラスに戻った。今度はダッシュではなく、まったり歩いて。





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