学園バサラ
□4月
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4月の柔かい日差しに高校に入学してふわふわする心。私も例外ではないけど。
チャイムと同時に菜穂とアリさんがやって来た。
「葉乃ー、今日の帰り一緒に新しくできたアイス屋さんによって帰らない?」
「無理やりにでも連れて行くんだから!!あそこのアイスって激ウマらしいよ。葉乃も一緒に行こうよ!」
中学からお馴染みのメンツに誘われるまま私―桜田葉乃も
「私ももちろん行く!!甘いものは正義だああ!」
となーんて叫ぶと周りに笑われた。私、そんなおもしろいこと言いましたっけ??
中学からの仲良しトリオで、最近できたアイス屋さんに寄った私たち。そして、3人仲良く帰る。私の通う学校は小中高のエスカレーター学校で全寮制。だから、帰る場所は一緒。もちろん部屋も一緒。ではなく、私以外の2人は同じで私だけハミ子なんです。
2人別れ、誰もいない部屋に向かってただいまーと言って中に入る。3年前までは先輩と相部屋だったが、その先輩は転校してもういない。たまに手紙のやり取りをする程度。
(かすが先輩元気にしてるのかな…。)
昔相部屋だった先輩のことをポツンと考えた。
「あ、そだ。さっき寮母さんから預かった手紙見ておかないと。誰からだろ…。」
かすが先輩からかなと思い期待を込めて、封筒を裏返し、送り主を確認。
『桜田 莉那』
…母さんからだった。
珍しい人からの手紙で私はポカンとした。ちなみに私の両親は、中学から入寮することになった私を置いて海外で仕事をしている。連絡は、まあたまに、極たまにある程度。『あんたなら、どこで生活しても大丈夫!』という訳の分からない考えであまり連絡してこない。
年に2、3回は戻ってきた時はたっぷり甘える。母さんと父さんのことは好きだし、連絡はもちろん自分的に嬉しい。
なんだろう、と思いながらはさみでチョキチョキ切って中身を取り出した。
『葉乃へ、
元気にしてますか?母さんと父さんはもちろん元気で仕事してます。フランスのエッフェル塔はいつ見ても素晴らしいです。
さて、今回手紙を出したのは、転校してもらおうと思ったの。今の学校に十分満足しているだろうけど、―――
(いやいや、母さんちょっと待ってください。今さら転校とか無理でしょ、普通。)
―――父さんの知り合いの方がぜひこの学園に来てくれって言われて断れなかったのよ。綺麗だし、設備も充実しているそうだから葉乃なら大丈夫よ!
本当は3月に転校とかの手配を済ませて、4月には転校させるはずだったけど、仕事忙しくて忘れてたの、ごめんね。
まあ、そういうことで5月から編入してね。引越しとかもちゃんと手配してるから。
夏くらいにこっちにまた戻る予定です。
母より
追伸:かすがちゃんもいるみたいよ(笑)。』
「ってか最後の(笑)って何よ?!付ける意味あるわけ??はあ…
母さん、ちょっとは可愛い娘の事情も考えてよ。」
葉乃はそれ以上つっ込む気にもなれず、ベットにダイブして弱々しく呟いた。
次の日、昨日の手紙のことを菜穂とアリさんに報告しようと思ってSHRの終わりを待っていると、SHRの終わりに担任が思い出したように桜田話があるから職員室に一緒に来て、と言われ先生の後について職員室に向かった。
(そういや、先生に転校のこと言わないと。でも、先に連絡してるはずなんだけど。)
職員室に入り、先生が座っている傍に立った私に向かって、
「桜田、転校するらしいね。昨日親御さんから連絡があった。
学校にはきちんと連絡が来てるんだから登校しなくてよかったのに。とりあえす今日は寮に戻って荷物まとめなさい。」
「え、早くないですか??まだ、5月まで時間あります。そんなに、急に準備しなくても…。」
「は……何訳の分からないこと言ってるの?
引越し明日なんでしょ。授業受けてる暇ないんだから、とっとと帰って荷物整理しなさい。クラスには先生から伝えとくから。」
いいね?と念押しして私を職員室から追い出した。先生もこれから授業らしく、英語の教材一式を持って出て行った。
私は、1人で誰もいない廊下を歩いて教室に向かった。
(引越し、明日ですと?!そんなこと一言も書いて無かっ、たは…ず。)
とりあえず、寮に戻ろうと思って私は、一旦カバンを取りに教室に戻り(移動教室で誰もいなかったのは幸いだった)、来たばっかりの学校の道を戻っていった。
(なんか、もう1枚手紙があった気がする…。)
少し嫌な予感をしながら、小走りで昇降口を出た。