短編

□死と生
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  死―プロローグ―
身を乗り出すと、地面が見えた。
車のヘッドライトが、眩しい。
遠くには、ネオンの光。
世の中なんて無駄だって、思った。
命なんて軽いんだって、思った。
ここからヒラリと飛び降りれば、私の命は終わるんだ。
クスクス。笑いが響く。
命が重いなんて、そんなの嘘。
たかが30kg。
―命は、軽い。
少しだけ衝撃を受ければ、人なんて、簡単に死ぬ。
そして、飛び降りた。
ただし、彼女だけ。
彼女は死んだ。
彼女が最期に思ったのは、「一緒に死ぬって言ったのに」だったと思う。
私はもう少しだけ、軽い命を長引かせてやろうと思った。
あんな奴と死ぬなんてごめんだ。
さて、私はこれからどこに行こう。
私はもう「殺人者」だから。
彼女を殺したことになるだろうから。
さて、これから私はどこに行こう。

その時だった。
後ろに暗い光という、物理的にはありえないものがいた。
その光は、どうしようかと考えている私に向かって恥ずかしそうに言った。
―僕の、友人になってくれないかい?

これが、私と彼との出会い。
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