短編

□住人達
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  サバト
今日は魔女の日。13日の金曜日。
不吉で、恐れられる日。
人間は、魔女は願いを叶えてくれたり、大鍋をかき混ぜたりすると思っているだろう。
そんなことは、ない。
断じて。
魔女は、誰にも捕まらない殺し屋である。
魔女修行とは、生き地獄。
邪悪な敵を殺して、殺しを依頼し、依頼される。サバトとは、集会なんかではなく、
魔女を百人殺した魔女を讃える儀式である。
生贄の人間は、「百人殺し」に嬲り殺される。
箒と帽子はただの凶器。
この貴重な13日の金曜日のために、魔女は「百人殺し」になって、箒と帽子に細工をする。サバトの日は、殺しの日。
日の入りから真夜中は、生贄の嬲り殺しとその鑑賞。
真夜中から日の出は、殺し合い。
ここで、次の「百人殺し」になろうとする魔女もいる。
私も、その一人。
私は、今までで九十九人殺した。
だから、あと一人。
真夜中の鐘が鳴った。
壮絶な争いが始まる。
血が、肉が、骨が、飛ぶ。
背後に気配がした。
私が殺そうと振り向いた時には、
すでに私の上半身と下半身はくっついていなかった。
―殺されたんだ。
そう気がついた瞬間、強烈な痛みが私を襲った。
死ぬ寸前、私が感じたのは
ただの、虚しさだけだった。
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