短編

□死神
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  待合室
静かな、薄暗い待合室。
―ここに居るのって、本当に面倒。
少女は、僕しかいないのに、違う誰かに語りかけていた。
―でも、死ぬのも面倒よね。
僕は、聞いてみた。
―君、ゲームとか、読書とか、やらないの?
―だって面倒じゃない。
きっと、この少女にとっては何でも面倒なのだろう。
―君の、未来は?
―一本の、木。冬の。歯も実もなくて、水さえ吸えない。もうすぐ、死ぬ。
ふと思った。
―話すのは、面倒じゃないの?
―口が勝手に動いているだけ。私は、早く消えたい。
死にたいでも、生きたいでもなくて、消えたい。何かがおかしいと感じた。
少女は急に目を輝かせた。
―そうだわ。何も、しなければいい。そうすれば、消える。
僕は必死で話題を変えた。少女が、本当に消えそうだったから。
―なんで、君はここに居るの?
―理由は、貴方と同じ。
僕は不安だった。何も分からなかった。
―君は、誰?
少女はまるで何かのように微笑んだ。
何だっけ・・・?悪魔じゃなくて、鬼・・・でもなく・・・邪悪な・・・
―それは、貴方が一番良く知っている。
少女は立ち上がって、病室の扉を開けた。向こうは漆黒の闇。ただの絶望。
そうだ。思い出した。全部。
僕は死んだんだ。ここは病院の待合室なんかじゃない。
少女は、死神。だから―
―今度はあなたが、死神。
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