短編

□死と生
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  死

私の友人に、死がいた。
死は、泣いていた。
なんで、生ばかり喜ばれるのだろう、と。
なんで、僕ばかり忌み嫌われるのだろう、と。
そして、その私の大切な友人は言った。
僕も、生も、どりらも命と魂を扱う職業なのに。
僕と生は同胞だったのに。
いつから僕たちは敵になってしまったのだろう、と。
全くその通りだと私は思ったけれども、でも、仕方がない。
ひとは、生が近付くと喜ぶだろう。
ひとは、死が近付くと泣くだろう。
私は死に向かって言う。
世の中は、所詮、理不尽なもの。
でも、私はそんな世の中よりもあなたのほうがずっと好き。
だから、あなたについていく。
私の愛する友人は、美しい笑みを浮かべて言う。
ありがとう、僕も、君が大好きだ。

そして私は死になった。
確かに忌み嫌われるけれど、でも私は泣かない。
私の横には彼がいる。

私の恋人に、死がいる。
死は、笑っていた。

ありがとう、僕も君が大好きだ、と。
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