15000HIT企画

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「お見合い!?」





窓の外は、真っ青な海ではなく、たくさんの家が広がり、城下町の賑やかな雰囲気がする。
そして、下臣たちも賑やかに働いている。

この国は、一帯で一番大きい。しかも、景気もよく、たくさんの貿易などの商業で利益を得ている。
だが、少し前までは、不景気で失業者も多発していた。
それをたて直したのは、他でもないあの達海猛だった。
そして、その達海さんの恩師にあたるのが、笠野さんである。




「あぁ。石神、お前そろそろ年だろう?」

「そうだけどー…。」

「気にする人がいるのか?」

「んー…。わかんない。」



そんな賑やかな城の一角で、俺は、笠野さんと話していた。

いきなり、手紙で呼び出されたと思ったら、お見合いの話だったのだ。
正直もう30歳なのでそろそろくるかと思っていたが、堀田から言われるのではなく、まさかの笠野さんだった。

別に女の子に興味がないわけではない。
それなりにたくさん遊んだ。
だが、特定の女の子はいなかったのは事実た。



「で、そのお見合い相手は誰なんっすか?…まさか、有里ちゃん!?」

「そんなわけないだろ。村越や兄やんに殺されるぞ。」

「だよねー。俺みたいなのには、くれないよな。」



冗談を言って笑う。
別に有里ちゃんならお見合いをする必要なんてないからだ。
だって、お互いが知ってるから。
嫌いなわけじゃないのだが、どうしても有里ちゃんをそういう対象として見れないのも事実だ。



「で、誰?可愛い?若い?若くて、可愛い子じゃないとお見合いなんてしないっすよー」



気になる本題はそれだった。



「まぁまぁ、ゆっくりといこうぜ。」



そういって、笠野さんは出されたコーヒーに砂糖を入れ、ゆっくりと飲んでいる。
俺は、まだそのコーヒーを一口も飲んでいない。
そして、笠野さんは一つ息をついて、俺を真剣な目をして見つめた。



「…あんな事故があったんだ。跡継ぎとか色々と考えないといけないだろ。」

「……。」

「遊んでばかりじゃダメだろ…。」



痛いところをついてきた。
ごもっともです。

俺は、何も言えなくなって、ただ笠野さんの話を黙って聞いていた。



「…まあ、石神が乗る気じゃないなら、無理に話を勧める気はないけどな。」



フッと笑みを浮かべて、笠野さんはそう言った。そして、残ったコーヒーを最後まで飲み込んだ。

外からは、達海さんと後藤さんの声が聞こえる。
今日も経済対策のことなどを考えているのだろうか。
その声に聞き入っていると有里ちゃんの声も聞こえてきた。
そんな声を聞くと、ここが自分の城でないと改めて感じる。
あの城だと人の声よりも、海の音の方が聞こえるから。
そんな城に新しい女の子が住むことになるなんて予想がつかない。
なんだか、不思議な気分というよりは、気持ち悪いという気持ちの方が強い。

これは、俺の女好きが年によって、衰えたからなのだろうか。
それとも、俺の心が変わったのだろうか。




「もー!達海さんっ!!」




有里ちゃんの叫ぶ声がする。
こんな女の子の声なんて、最近聞いてなかったような気がする。



そうだ…。
いつも俺は……。


(ガ・ミ)



ここ数週間、俺は、堺さんと「会話」してばかりいたからだ。
疑問は、確信へと変わった。




「石神?」



何も言わない、俺を変に思った笠野さんが、俺に声をかけた。



「あ、はい。」

「で、するのか?しないのか?」

「んー…。」



腕を組んで考えこむ。
断ったら、きっと笠野さんの顔に泥を塗ることになるだろう。
しかし、今は特定の女の子が欲しいとは思わない。
どうしたらいいかと悩んだが、やっぱり良い案は浮かばなかった。



「あのさ、笠野さん…。」

「ん?」

「お見合いはするけど、付き合わないのはダメかな?」



恐る恐る、そんなことを言ってみた。
笠野さんは、すごい表情をしていた。顔の表情が崩れている。



「お前、相手に失礼だろ…。」



ため息をして、頭をかく笠野さん。



「しょうがないでしょ。だって、どうしたらいいかわかんないんだもん。」

「あー。わかったよ。OKってはあっちには言っとくからな!まぁ、会って気持ちが変わるかもしれないからな。」



そう言って、またため息をついた。










俺は、その時この選択が一番いいと思っていた。





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