15000HIT企画
□8
1ページ/1ページ
「お見合い!?」
窓の外は、真っ青な海ではなく、たくさんの家が広がり、城下町の賑やかな雰囲気がする。
そして、下臣たちも賑やかに働いている。
この国は、一帯で一番大きい。しかも、景気もよく、たくさんの貿易などの商業で利益を得ている。
だが、少し前までは、不景気で失業者も多発していた。
それをたて直したのは、他でもないあの達海猛だった。
そして、その達海さんの恩師にあたるのが、笠野さんである。
「あぁ。石神、お前そろそろ年だろう?」
「そうだけどー…。」
「気にする人がいるのか?」
「んー…。わかんない。」
そんな賑やかな城の一角で、俺は、笠野さんと話していた。
いきなり、手紙で呼び出されたと思ったら、お見合いの話だったのだ。
正直もう30歳なのでそろそろくるかと思っていたが、堀田から言われるのではなく、まさかの笠野さんだった。
別に女の子に興味がないわけではない。
それなりにたくさん遊んだ。
だが、特定の女の子はいなかったのは事実た。
「で、そのお見合い相手は誰なんっすか?…まさか、有里ちゃん!?」
「そんなわけないだろ。村越や兄やんに殺されるぞ。」
「だよねー。俺みたいなのには、くれないよな。」
冗談を言って笑う。
別に有里ちゃんならお見合いをする必要なんてないからだ。
だって、お互いが知ってるから。
嫌いなわけじゃないのだが、どうしても有里ちゃんをそういう対象として見れないのも事実だ。
「で、誰?可愛い?若い?若くて、可愛い子じゃないとお見合いなんてしないっすよー」
気になる本題はそれだった。
「まぁまぁ、ゆっくりといこうぜ。」
そういって、笠野さんは出されたコーヒーに砂糖を入れ、ゆっくりと飲んでいる。
俺は、まだそのコーヒーを一口も飲んでいない。
そして、笠野さんは一つ息をついて、俺を真剣な目をして見つめた。
「…あんな事故があったんだ。跡継ぎとか色々と考えないといけないだろ。」
「……。」
「遊んでばかりじゃダメだろ…。」
痛いところをついてきた。
ごもっともです。
俺は、何も言えなくなって、ただ笠野さんの話を黙って聞いていた。
「…まあ、石神が乗る気じゃないなら、無理に話を勧める気はないけどな。」
フッと笑みを浮かべて、笠野さんはそう言った。そして、残ったコーヒーを最後まで飲み込んだ。
外からは、達海さんと後藤さんの声が聞こえる。
今日も経済対策のことなどを考えているのだろうか。
その声に聞き入っていると有里ちゃんの声も聞こえてきた。
そんな声を聞くと、ここが自分の城でないと改めて感じる。
あの城だと人の声よりも、海の音の方が聞こえるから。
そんな城に新しい女の子が住むことになるなんて予想がつかない。
なんだか、不思議な気分というよりは、気持ち悪いという気持ちの方が強い。
これは、俺の女好きが年によって、衰えたからなのだろうか。
それとも、俺の心が変わったのだろうか。
「もー!達海さんっ!!」
有里ちゃんの叫ぶ声がする。
こんな女の子の声なんて、最近聞いてなかったような気がする。
そうだ…。
いつも俺は……。
(ガ・ミ)
ここ数週間、俺は、堺さんと「会話」してばかりいたからだ。
疑問は、確信へと変わった。
「石神?」
何も言わない、俺を変に思った笠野さんが、俺に声をかけた。
「あ、はい。」
「で、するのか?しないのか?」
「んー…。」
腕を組んで考えこむ。
断ったら、きっと笠野さんの顔に泥を塗ることになるだろう。
しかし、今は特定の女の子が欲しいとは思わない。
どうしたらいいかと悩んだが、やっぱり良い案は浮かばなかった。
「あのさ、笠野さん…。」
「ん?」
「お見合いはするけど、付き合わないのはダメかな?」
恐る恐る、そんなことを言ってみた。
笠野さんは、すごい表情をしていた。顔の表情が崩れている。
「お前、相手に失礼だろ…。」
ため息をして、頭をかく笠野さん。
「しょうがないでしょ。だって、どうしたらいいかわかんないんだもん。」
「あー。わかったよ。OKってはあっちには言っとくからな!まぁ、会って気持ちが変わるかもしれないからな。」
そう言って、またため息をついた。
俺は、その時この選択が一番いいと思っていた。
.