15000HIT企画

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沈んでいく身体と意識の中、ナニカが手に触れる感覚がし、ぐいっと引っ張られた。

しかし、俺の遠くなっていく意識の中ではそれが何なのかを見ることはできなかった。






















「…起きて……さい。」




遠くの方からまた何かが聞こえる。

その声は、どこかで聞いたことがあるような…。
どこか懐かしい感じがした。



「……さん、ガミさ…ん。」


だんだんとこの呼ぶ声が近くになっていく。

誰だ。
お前は、誰だ。



「ガミさん!」



遥か遠いところから呼んでいると思っていた声が、頭の上から聞こえてきた。



「…ほ…た…。」

「よ、良かった!気が付いたんですね!」



ずっと俺を呼んでいたのは堀田だった。
そして、堀田の後ろに見える壁は俺にとって、とても見覚えがある部屋だった。
そう、俺の部屋だ。

当然、ここに運ばれた記憶もない。
どうやって浮かんだかさえもわからない。
ということは当然、誰かが俺を水面まで引き上げてくれたということになる。



「……誰が助けたの?」



誰かがいたのはわかる。
だけど、誰かはわからない。



「姫ですけど。」

「姫?」



思わず声が裏返ってしまった。
だって、そんな暗い海の中に女性がいるわけがない。しかも、大の男を水面まで引き上げることなどできるわけがない。
ましてや、姫だなんて。
お嬢様が海で泳いでいるだなんてあり得ない。



「嘘でしょ。」



堀田を少し疑いの目で見る。
堀田は、困った顔をしたけれど、俺の目から背けることはしなかった。



「まあ、あの…隣の国の…姫なんですけど。」

「ああ、あの。」



隣の国の姫は、知り合いの娘さん。
しかも、それなりに美人。
だけど、なんかちょっと怖い。
仕事のこととか国の政治のことになると目が無い変わった女の子だ。



「達海さんを探してたみたいですよ。」

「ああー…。なるほど。」



あの子なら達海さんを探して海の中までも潜ることもあり得るかもしれない。



「さすがだねー。」

「まあ、偶然みたいですけどね。」

「水とか大丈夫な子そうだもんね。」

「でも、ちょっと濡れたみたいですけど。」

「え?」



また、声が裏返った。

ちょっと?
ちょっとって何?
海の中に飛び込んでおいてちょっとはないだろう。
おもいっきりびしょびしょになるに違いない。
じゃあ、堀田が言っていたことって…。



「もしかして…俺は、浜で見つかったの?」

「そうですけど。…それがどうしたんですか?」



堀田が不思議そうに、俺を見つめる。

俺が言っていたのは、海でのこと。
でも、堀田が言っていたのは浜でのこと。
つまり、俺を引き上げたのはあの姫ではない。
じゃあ、一体誰が引き上げてくれたのだろう…。



「どうかしたんですか?」



心配そうに俺をまた見つめる。



「いや、何でもないよ。」



俺は、部屋の中の窓から海を見つめた。
その城は海と、目と鼻の先にある。
確かに俺は、この海の中に沈んでいた。
乗っていた船が嵐にあって沈没した。
まだ、堀田には聞いていないが、きっと死んでしまった奴も、行方不明な奴もいるだろう。



その海の中で、誰かが俺に触れたんだ。
あれは一体なんだったんだ?



俺は、そのまま今は静かな海を見つめた。






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