短編

□秋は夕暮れ。
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秋は夕暮れ。
夕日のさして山の端いと近(チコ)うなりたるに、烏の寝どころへ行くとて、三(ミ)つ四(ヨ)つ、二つ三つなど、飛びいそぐさへ(エ)あは(ワ)れなり。
まいて雁などのつらねたるが、いと小さく見ゆるはいとを(ヲ)かし。
日入りはてて、風の音、虫の音(ネ)など、はたいふ(ウ)べきにあらず。




秋は夕暮れ。
夕日が差して山の端にとても近づいたころに、烏がねぐらへ行くというので、三、四羽、二、三羽などと飛び急ぐことまでもしみじみとしたものを感じさせる。
まして、雁などが列を作っているのが、たいそう小さく見えるのはたいへんおもしろい。
日がすっかり沈んでしまって、風の音、虫の音など、これもまた、いいようもない。




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