衆桜鬼
□違えし約束 下
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校庭に植えられている桜の前を通りかかると、俺は足を止めてはらはらと花びらが散る桜の木を見上げた。
桜を見ると、昔のことを思い出す。
昔と言っても俺が生まれるずっと前、前世でのことだ。
ん?
どうして前世の記憶があるのかって?
よくは知らねぇけど、現に俺に記憶があるし、現世で出会った同じ学校の教頭である土方さん、生徒の総司や斎藤にも前世の記憶があった。
校長の近藤さんや同僚の新八にはなかったから、個人差があるんじゃねぇか?
とにかく、俺は新選組十番組組長として動乱の世を生きる最中、一生こいつと添い遂げてぇって奴を見つけた。
同じ新選組の幹部で、そん中でも最年少の平助だった。
しばらくは片思いが続いてたが、俺達の想いは通じ合い、晴れて恋仲となることができた。
だが運命ってヤツは残酷だった。
長机や椅子を持ったまま俺は、舞い散る桜の花びらを眺めて更に思い返す。
『オレ絶対左之さんから離れないから、ずーっと傍にいるって約束する』
油小路の変後に、羅刹となった平助とそう約束した。
だがその約束をした数年後の戦いの最中、平助は寿命を使いきって灰となり、俺の目の前で散って逝った。
平助が死んだ後、上野での戦いで俺も命を落とした。
約束をして二人で指切りをした日、そして平助が死んだ日。
どっちも今みてぇに桜が舞う季節だったのを覚えてる。
あいつ、覚えてるのか……?
そもそも、今生まれてるのか……?
俺は唇を噛みしめ、桜に背を向けると歩き出した。