衆桜鬼
□違えし約束 下
1ページ/4ページ
春の温もりが、校門脇のパイプ椅子に腰かけている俺を眠りへと誘う。
「ねみぃ……」
ふあぁ……とあくびを漏らす俺は、目の前のバインダーに挟まれているリストをぺらぺらと捲る。
今日は俺が勤めている薄桜学園の入学式。
俺が持っているのは新入生の出欠リストだ。
リストには軽く100を超える数の名前が記され、出席が確認された生徒にはマーカーが引かれている。
「やっぱり休みが多いな……」
季節外れのインフルエンザが流行っているらしく、リストの3分の1の生徒にはマーカーが引かれていない。
「さすがにもう来る奴いねぇよな」
あと10分もすれば式が始まる。
新入生は式が始まる前に、教室で入学式の説明やHRをするから早めに来ねぇといけねぇはずだ。
俺は椅子から立ち上がると折り畳み式の長机を畳んで脇に抱え、空いた手でパイプ椅子やリストなどを持つと校舎へと向かった。