衆桜鬼

□違えし約束 下
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 春の温もりが、校門脇のパイプ椅子に腰かけている俺を眠りへと誘う。



「ねみぃ……」



 ふあぁ……とあくびを漏らす俺は、目の前のバインダーに挟まれているリストをぺらぺらと捲る。


 今日は俺が勤めている薄桜学園の入学式。

 俺が持っているのは新入生の出欠リストだ。

 リストには軽く100を超える数の名前が記され、出席が確認された生徒にはマーカーが引かれている。



「やっぱり休みが多いな……」



 季節外れのインフルエンザが流行っているらしく、リストの3分の1の生徒にはマーカーが引かれていない。



「さすがにもう来る奴いねぇよな」



 あと10分もすれば式が始まる。

 新入生は式が始まる前に、教室で入学式の説明やHRをするから早めに来ねぇといけねぇはずだ。


 俺は椅子から立ち上がると折り畳み式の長机を畳んで脇に抱え、空いた手でパイプ椅子やリストなどを持つと校舎へと向かった。

 
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