novel ss1

□In the kiss…
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「さてと、後はなにを用意しておこうかな…」

 サクラは狭いキッチンをぐるりと見周しながら一人呟いた。
今日はナルトが3週間ぶりに帰ってくる。

 最近のナルトはAランク任務が増えてとても忙しい身だ。必然、二人は会う時間が無くなって擦れ違いが続いていた。
そんな時、ナルトが「一緒に暮らそう」と言い出し、サクラも喜んで承諾した。一緒に暮らし始めてもうすぐ1年。

 ナルトの好きな物をもう一品作っておこうと、包丁を握ったところで玄関が開く音がして、ドタドタと慌ただしい足音が走ってくる。
サクラはキッチンに立ちながら、音の主の姿を想像してクスリと笑った。

 リビングのドアが勢い良く開き、ナルトが飛び込むようにして入ってくる気配がする。
サクラは、振り向こうとしたと同時にギュッと強く抱きしめられ、思わず持っていた包丁を落としてしまった。

「サクラちゃんっ!!」

 ナルトは後ろから覆いかぶさるようにサクラをギュウギュウ抱締め、サクラの髪に顔をグリグリと擦りつけてきた。
 サクラがナルトの方を向こうと思っても、きつく抱きしめられているせいで身動きが取れない。


「もう…包丁…危ないじゃない」

「だって!サクラちゃん!!」

「はぁ…」

ナルトの腕の力が少し緩んで、サクラはようやくナルトの顔を見て優しい笑顔になる。

「ナルト、おかえり」と言いながら久しぶりに見る愛しい顔を指でなぞる。

「うん。ただいまサクラちゃん。会いたかったぁーーー!」

 ナルトは笑みを浮かべると、サクラにただいまのキスを落とす。
そして、少し湿っているサクラの髪を自分の指にくるくると巻きつけた。

「ねぇ、もう風呂入ったの?」
「うん。先に入った。」
「エーーー」
「だって、ナルト帰ったらすぐにお風呂入りたいかなと思って」
「何で先に入っちゃうのさ!一緒に入りたかったてばよ!」
「まぁまぁ(汗)とりあえずゆっくり温まって、疲れをとって来なさいよ」


 サクラはちょっとだけ苦笑いを浮かべながら、口を尖らせてブツブツと文句を言うナルトを浴室へと向かわせる。
 1年近くも一緒に暮してはいるが、サクラはお風呂に一緒に入るのだけは未だ恥ずかしくてたまらないのだ。

「お風呂あがったらすぐご飯だから。チュッ☆ ねっ?」とキスをして宥め、そのまま浴室へと送り込む。


―― やれやれ…

 ナルトが里外任務から帰ってくるといつもこうなる。
長期で家を離れている時は特に。

 長期任務から戻ったナルトはいつも以上に甘えてくる。
ナルトが言うには「だって、サクラちゃんが不足中なんだってばよ!」だそうだ。

一緒に暮らして初めて知ったナルトの一面。
今までも任務の後はいつもよりも甘えていたけれど、それでもまだ控えめだったようだ。

 でも、サクラはそんなナルトも嫌いではない。
むしろ素直に甘えられない自分の気持ちを埋める事が出来るので大歓迎だとさえ思っている。
サクラ自身、会えない間は心配だったり寂しかったり、ナルトに逢いたくてたまらないのだから。
きっと、普段のサクラを知る人々からは想像もつかない位、今の自分も甘いんだろうなと思う。


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