novel ss1

□暁光
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※サスケさん帰還後初めて三人で見る初日の出。


 冬の乾いた風が吹き抜ける森の中を三つの人影がゆっくりと移動していた。
三つの影は、近づいたり離れたりを繰り返しながら楽しげに進んでいく。

「この辺足元滑るよ、サクラちゃん気をつけてってってっっうおぁっ!」

後ろに居るサクラを振り向きながら声をかけたナルトが豪快に転んだ。

「フンッ!まずはテメーの心配しろっ。ウスラトンカチがっ」
「大丈夫?(汗)」

サスケとサクラはひっくり返ったナルトの手を引いて起してやる。

「いってぇ…オレってばカッコ悪い…」
「今に始まった事じゃないわよ」
「えぇーー!サクラちゃんそれはないってばよ」
「…うるさい奴らだな。ほら行くぞ」

じゃれる様に話す二人を置いてサスケはスタスタと先を歩く。
ナルトとサクラは慌ててその後を追う。

森の木々を抜け岩肌の続く高台を歩き、三人は里を見降ろせる崖の淵に並んで立った。
一際強い風が吹き上げてきて三人の髪と防寒衣をなびかせた。

「うっわ、寒〜い」

 思わず身を縮めたサクラを風から庇うようにして、サスケとナルトがさり気なく寄り添う。

 ナルトが隣に居るサクラの右手をそっと握った。
サクラがちょっと驚いたようにナルトを見るが、ナルトは真っ直ぐ前を向いたまま。
サクラは目元に笑みを浮かべてその手を握り返しながら、左手で隣に居るサスケの手を握った。

 サスケがギョッとしながら自分を見ているのを感じたけれど、サクラは気付かないふりをしてナルトの見ている方を真っ直ぐに見ていた。
振りほどかれるかと思った左手はそのままサスケの右手に収まったので、サクラは更に目を細めて微笑んだ。


「お!昇って来たってばよ!!!」

三人の見る方向から、赤味を帯びた太陽が昇ってくる。
木の葉を囲むように生い茂る森の木々を照らし、まだ眠りについている里を照らし始める。
光が広がる様を三人は其々の想いを胸に見つめていた。


「スゲー綺麗だってばよ」
「あぁ…」


日の光に照らされたナルトとサスケの穏やかな横顔を見て
サクラは胸が一杯になる。


『明けない夜はない――』 

サクラは遠い昔に聞いた言葉を思い出す

そう信じてこの日が来る事をどんなに願ってきただろう

辛い事がたくさんあった
悲しい事もやり切れない思いもたくさん

もしかしたら
この夜はもう明けることはないのかもしれないと思った
信じる心が折れそうになった

その度に、折れそうだった心をナルトが支え続けてくれた
信じる事を諦めずに居させてくれた
そして、約束通りサスケくんを連れ戻してくれた

ここまで私達を導いてきてくれたナルト


今年最初の日の光は
寒さも夜の闇も其々の胸の中の想いも
全てを暖かく包みこんで行く


長くて苦しい闇のような夜はようやく明けた



(2011.1.8)

年末を一緒に過ごした三人はそばを食べた後、初日の出を見に行ったのですよ。三人に幸あれ!

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