novel ss2

□膝を抱える夜
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窓際に配置したベッドの上で、サクラは大切な一枚の写真をそっと指でなぞりながら夜空へと視線をあげた


真っ暗な空に 鋭く切り込みを入れて作ったような
細い三日月だけが浮かんでいた

冷たく 儚げな 青を纏ったその姿は
目を逸らしたほんの一瞬で
闇の中へと溶けて消えて行ってしまいそう



弱い月明かりがベッドの上に放り出された素足を照らしている

青を纏う月光の寂しさが肌から浸食してくるような気がして


いつもよりも白く、儚ささえ纏いながら幻想的に浮かび上がる自分の足を
サクラは胸元へとしっかりと抱き寄せた



ふとした時に、闇から救いだそうと伸ばした手が闇に浸食されてしまうような気がして、無性に恐いと感じることがある

ほんの僅か ほんの刹那の揺らぎをも闇は見逃してはくれないのだ


闇に捕らわれてしまったあの人と
闇を照らそうともがく彼と
闇に怯える自分と


自分達が向かう先は同じ闇の中なのに
自分だけが一人では闇を抱えることも突き放す事も出来なくて


月の光に怯えて震えながら

ただただ朝を待つ
 


強く在ろうと

彼等とともに在ろうと

あの時心に決めたから




そんな自分が
彼に傍に居て欲しいと思うのは
いけないことなのだろうか




.
(2011.05.12)


→あとがき…
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