novel ss2

□サクライロ
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春の空は、どこかぼんやりとした色をしている

そんな事を何気なく思いながら歩いていた



「ねぇ、ナルトは何色が好き?」

「へ?」



突然自分の耳に飛び込んできた声に、思わず間抜けな声が零れた。

隣を見れば、風に吹かれるサクラ色の髪を手で押さえながらサクラがナルトを覗き込むようにして見ていた。

まっすぐに自分を見つめる翠の瞳に、トクン…と胸が高鳴った。


「何色が好きか、って」

「え、あ、あぁ」


ぼんやりとしたまま何も答えないナルトに、サクラがもう一度問いかける。


「色、ねぇ……」



きっとサクラの質問には特に意味はないのだろう。
でも、自分の好きな物を好きな子に聞かれるというのは、なんだか嬉しいなと思った。
ほんの一瞬でも自分に興味を持ってくれたことが嬉しい。


ナルトはサクラに向けていた視線を春の空へと戻しながら、好きな色を思い浮かべた。



空の色 浮かぶ雲の色 沈む夕日の色 風に揺れる花々の色 穏やかな風が吹き抜けていく森の色

今までに自分が見てきた色彩が次々に浮かんでくる


そして、どの色にもサクラの姿が一緒に浮かんでくる



―― あぁ、そうか



自分の好きな色なんてあまり考えたことがなかったナルトだったが、ある事に気がついて思わず笑みを浮かべた



―― 自分の好きな色



自分が見ている色彩の中にはいつもサクラが居るのだと気付く

そして、こんなにも自分の中にサクラが存在していることに改めて驚く

きっとサクラが居なくては自分の中にある色彩は色褪せてしまうのだろうと思う




―― サクラの居る色



「ねぇ、何色よ〜?」


いつまでも答えないナルトにサクラが声を掛ける。



「……サクラ色、かなぁ」


ナルトは小さく空に向かって呟くと、サクラへと笑顔を向けた。



「ねぇサクラちゃん。
 桜が咲いたらさ、一緒に花見しような」

「あ、いいわね。サイやヤマト隊長も誘おうか」



ナルトは、好きな色の話など忘れてしまったように花見の事を話し始めたサクラを柔らかく見つめた。

今年もまた一つ。
自分の中に鮮やかな色彩が加わる幸せをそっと願いながら






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(2011.05.03)


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