novel long1
□月 華 -GEKKA-
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第十一章
(11-1)
夜空には今夜も綺麗な月が昇り、木の葉の里は月華に包まれながら今日も眠りに就こうとしていた。
静かに穏やかに、その光の中時を刻んでいく。日々は滞る事なく流れて行く。
あの満月の夜の出来事も、遠い昔のように感じられていく。
木の葉の里を襲った忍び達は、国をなくし今は土の国の統治下に置かれている集落の者達と言う事がわかった。
この集団は、先の忍界大戦の最中に滅んでしまった自国の復興を掲げ、ゲリラ的活動を繰り返していた。
火の国は厳しい抗議とともに、先日捕縛した者達を土の国へと引き渡しその処罰を委ねた。
土の国からは正式な謝罪と処罰の報告、今後の更なる友好関係の維持向上についての陳情が行われた。
同時に、火の国では各国に対して今後の自国の在りようと他国との関係についての声明を発表した。
サクラは窓辺に佇み、先日の綱手の演説を思い出していた。
里全体を震えさせるほどの歓声と鳴りやまない拍手が、今も鮮やかにその空間ごと甦ってくるようだ。
綱手は広場を見下ろす屋上に立ち、眼下に集まっている里の民に向け、ある決意を宣言した。
綱手の立つ背後には、各国の大名達や各里の代表者達が並びその言葉を聞いていた。
尾獣の力はこの国だけの物であるのではなく、世界の為に在るべきだという綱手の言葉に集まった民衆、諸国大名達が拍手を送った。
「我が火の国と木の葉隠れの里は、大きな決断をした」
綱手がそう言うと、その隣に眩しい金色を揺らしながらナルトが現れた。
後ろに結び紐を長めに垂らした木の葉の額当てと、四代目火影の姿を思わせるような白いマントを風になびかせ、凛としてそこに立つ姿に、より一層大きな拍手と歓声が沸き起っていた。
「今日は…満月なのね」
大きな窓から夜空を見上げ、あの日のナルトの姿を思いながらサクラが呟く言葉は、そのまま夜の闇へと溶けて行った。
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