novel long1
□月 華 -GEKKA-
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第十章 切 願
(10-1)
木の葉の里ではすでにナルトの受け入れ態勢が整っていた。
サイの鳥が病院の屋上へ舞い降りると、ナルトはすぐに医療スタッフに運ばれて行った。
サイとシカマルは、自力では歩く事が出来ない状態のサクラを支えながら、ナルトの後を追う。
サクラが処置室前の廊下に辿り着いた時、ちょうど処置室の扉が開き診察台の上に寝かされたナルトの姿がサクラの目に飛び込んできた。
閉じられた目、血の気を失くした顔
ダラリと力なく垂れた手、体中にはりついた赤黒い血痕
サクラは瞬きもする事もできず、ただ自分の目に飛び込んできたナルトの姿を呆然と見つめていた。
その姿のどこにも、生きている証が見受けられない
医療に携わるサクラだからこそ、はっきりとわかるナルトの状態
『サークラちゃん…ニシシシッ』
『サクラちゃんはオレが守る』
サクラに向けられてきたいくつものナルトの声と笑顔が、診察台で横たわるナルトに重なっていく。
あの碧い瞳が自分を見る事はもうない…
私がその光を奪ってしまった
苦しい…
息ができない……
ナルトの姿が静かに閉じて行く扉の奥に消えた。
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