novel long1

□月 華 -GEKKA- 
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 第九章 碧 翠 



(9-1)

 目の前でサクラの瞳が一瞬だけサクラのそれになり、再び暗い紫に染まって行く。
その瞳から零れ落ちた一粒の涙と同時に発せられたサクラの叫ぶ声。



「ナルト…よけて!お願い!!!」





 しかし、ナルトはサクラを見つめたまま避けようとはしなかった。

自分の体へと真っ直ぐに刃を立てて向かってくるサクラを真正面からその刃ごと受け止めた。



仲間たちの叫ぶ声が一瞬聞こえたが、その声は何かに吸い込まれていくようにして一気に遠のいていく。
一切の音という音がナルトの周りから掻き消えてしまったようだった。




 ズ ン……



体に鈍く響く衝撃と熱にも似た痛み

そして、体に感じるサクラの体温と重み




ナルトはサクラの背に手を回し抱締めた。

 サクラの持つチャクラ刀は更に刺さり込み、ナルトの体を深く貫き地面にポタリポタリと赤い模様を散らしていく。
その刀を握るサクラの手をナルトの真っ赤な血が伝い流れて行く。


「…っう…ぐ…ごほぁっ」


痛みに顔を歪ませナルトは少量の血を吐いた。
しかしサクラを抱く手は緩めない。


「サクラ…ちゃ…ん」


掠れた声で愛しい名前を呼ぶ。




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