novel long1

□月 華 -GEKKA- 
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 第八章 秘 鑰 



(8-1)
 乾いた風が土埃を巻き上げながら通り過ぎていく。
崩れた岩が積み重なりいくつかの小山を作っている。
岩の切れ目に先程から外を窺うような人影がちらちらと見え隠れしていた。

 その積み石を見降ろす場所で、シカマル達はその様子を見ていた。
積み石の切れ目が敵のアジトの入り口になっており、敵は結界に守られた地中のアジトに潜んでいる。



「各隊、所定の位置に就きました」

「わかった。合図があるまでそのまま待っててくれ」

 そう答えてシカマルが顔をあげると、ナルトがこちらに向かって来るのが目に入った。
シカマルは思わずナルトの方へと走り寄った。



「ナルト」

「シカマル…」



ナルトは歩みを止めシカマルの視線を真っ直ぐに受け止めている。


 しかしシカマルは声を掛けたものの、その後の言葉が出てこない。
先日聞いた、ナルトと綱手達との会話。
その後でナルトが自分に言った言葉。


 ナルトに伝えたい事がたくさんある筈なのに、言葉が見つからない。
IQ200というのも、こんな時には全く役に立たない…とシカマルは心の中で舌打ちした。

そんなシカマルの心中を察してか、ナルトはゆっくりとシカマルの方へと歩き始めた。
シカマルとすれ違いざま、低い声で告げた。


「オレは大丈夫だってばよ。ぜってぇーサクラちゃんは助ける。だから…」

「……」


「サクラちゃんを 頼む」

「……わかってる」


シカマルの言葉を聞き、ナルトは口元にだけ僅かな笑みを浮かべるとそのまま歩き去って行った。


ナルトの背中がだんだんと遠のいて行くのを感じながら、シカマルは拳を強く握り締めた。
そして、もう一度小さく呟いた。


「何度も言わなくったってわかってる。任せろ…」



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