novel long1

□月 華 -GEKKA- 
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(5-2)


土埃の向こうに、驚きと悲しみと
色んな感情が混ざり合った表情のナルトが立っている。




ナルトを傷つける事なんかできない

殺すなんてありえない




なのに自分で自分が止められない…

目の前に居るナルトを見ると体の奥深くから

殺意の込められた叫びにも似た声がする




その声に抗おうと叫ぶ自分の声は

体の奥深くから響くように伝わり広がる殺意によって掻き消される




自分の意志とは反対に

体はその声に その思念に従おうとする




抗おうともがけば

無駄な事だと殺意が嘲笑う



この声に従い目の前の男を殺せと

殺さぬ限りお前は自由にはなれないのだと…





ナルトを守りたいのに

私の手は、ナルトを傷つける為にクナイを握る



涙が止まらないのに

ナルトの前に立つ私の目からは一粒も涙は零れない



こんなにもナルトを想うのに

それなのに私の体はナルトを亡きものにしようと動く



ナルトを殺すことでしか自分を取り戻せないのなら…

いっそ自分で自分を殺してしまいたいのに

それさえも叶わない…




クナイを握る私の体は、一歩また一歩とナルトに向かう



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