01/18の日記

21:04
one day6
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「あーなるほど!」
三成がレポートの解説をしてやると家康はあーとかうーとか言いながら頷く。
「…そんなに感心する事か?」
三成は少し呆れたような声で聞いた。レポートの内容は海外文学を和訳せよというもの。三成にとっては当たり前だが普通に難しいものだ。
「いや…わし理系の教科で大学入ったので文系は中学生レベルで…」
ははっと笑いながら頭に手をやる。
そんな彼の仕草、表情を見ながら三成は思う。
(間違いなく家康だろう…)
三成がそう確信したのは何も見た目だけではない。彼の作る空気が遠い昔いさかいがない頃、縁側で半兵衛からだされた兵法書の宿題を2人で解いていた頃のあの空気そのものだったからだ。
言い合いながらもどこか穏やかなあの空気だった。

「あー!できた!!」
家康の声でしばしぼんやりとしていた三成は現実に引き戻された。

「ありがとうございました。助かりました!!単位落とすわけにもいかないので…」
それを聞くと三成は立ち上がった。コートを羽織る。
「……そうか…良かったな。」
ぽつりと家康に答える。背を向ける三成に家康は声をかける。
「……あの…なんでわしの名前知っているんですか?さっき家康って呼びませんでした?」
ピタリと三成の動きが止まる。
「……お前によく似た古い知り合いがその名前だった…間違えたのだ」
三成は少しの間の後そう答えた。
本当の事など言ったところで理解できないだろう。
「そうですか。すごい偶然ですね!わしは徳川家康といいます。そこの薬科大の三年です。……あのお名前教えてください」
三成は少し眉根をひそめる。
「わしよくここで英語のレポートに追われているのでもしまたあったらコーヒー飲む時間だけまた英語教えてください」
三成の眉間のシワが消え驚きの表情へ変わる。

しばらくの沈黙した後三成は口を開く。
「…偶然があったらな…」
「石田三成だ」
家康の表情が明るくなる。
「…ありがとうございます!」
「ただし…その敬語をやめろ。どうも落ち着かん」
そういうと三成は店を出た。

…私は…何をしているのだ…。奴を私は自らのために手にかけたというのに…。
それでも…なぜか近くにいたいだなどと…。
胸の奥がぐっとなる。
「……あさましいな…」三成は自嘲の笑みを浮かべた。

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