文 忍び

□主
1ページ/2ページ

「旦那…、もういい加減やめようよ………。」
「佐助……」
いつになく真剣な目で幸村は佐助を睨んだ。
(………あーどうしてこうなったか)と心の中で舌打ちをして佐助はため息をつき、
「幸村様…申し訳ございません。言葉遣いが過ぎました。」
と自分に覆い被さっている主君に言った。
幸村は満足そうだ。

事の発端は自分だ。旦那があんまり武芸ばかりしていて政務の方が若干遅れ気味だったから言ったのだ。
「あーあー、竜の旦那は強いけど政務もしっかりこなしてるよ。俺様そんな主君が良かったよ」
と嫌みを込めて言ってみたのだ。
するとあきらかに怒りの表情で幸村は言った。
「佐助…」
「何よ、俺様悪くないよ。旦那がわるいんじゃん」
「佐助……お前は俺の忍びだな、俺のもので俺の武器だ」
だ…旦那?と聞きながら少し後ずさる。すると幸村は佐助の腕を掴み逃がさないようにした。
「片倉殿は政宗殿にそのような言葉遣いはせんなあ…」
そう言うとさらに続けた。
「そのような事を言われてはこちらもしっかり主君として政務を行おう。だから佐助…今日1日は主君と部下をわきまえた言葉遣いと行動を命じる! 」
………。というわけでこんな結果になったのである。旦那はしっかり政務をこなし俺様も…いつもわきまえてるけど、なるべく軽い口調は使わないよう頑張った。
ところが夕餉の際につい緊張感が切れいつもの口調が出たのだ。すると旦那が怒ったのか俺様を組み敷いたわけだ。

「…だ…幸村様、どいてくれますか?」
「佐助…お主には躾が必要そうだな」
「…へ?…うわっ…」
幸村はいきなり佐助の腕を掴むと引きずった。
「ちょっ…なにすんだよ旦那!放せって」
佐助は抵抗するも床はすべり幸村の閨まで引きずられていった。
いきなり布団に乗せられ佐助は驚き固まる。幸村は佐助に覆い被さると、口角をあげ言った。
「さて躾の時間だ。」
こ…こえーっ…佐助の顔が引きつる。どうしたんだ旦那は…い…いつもの旦那じゃない…。
佐助はさらに固まった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ