文 忍び

□恋慕
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青い空の下幸村は、団子を食べつつ縁側でぼんやりと考え事をしていた。
その原因は3日前、上田に前田の風来坊、慶次がやってきていた時のことだった。
2人はちょうどこの縁側の前で手合わせをしていた。「おおおお…!!」
「よっとぉ〜!!」
突進してくる幸村を慶次がひらりとかわす。
「赤い兄さん、そろそろ休憩にしない〜?」
「む…そうでござるな」慶次の提案に幸村も応え、2人は縁側に腰掛けお茶を飲み始めた。
「でもさぁ…あんた毎日毎日あきないねぇ」
上田に来てから慶次は毎日手合わせの相手をさせられていた。まあ、イヤではないが…。
「?飽きる?其れがしそのような気持ちになったことはございませんな」「……」
はっきりとした答えに、慶次は固まったが切り出してみた。
「いやだってさぁ〜、世の中楽しいこといっぱいあるよ?恋ぐらいしないとさ…、あんたも腕の立つ嫁さん見つけたら?」と慶次が言うと
「こ…いですと!?は…破廉恥な…!!!!」
顔を真っ赤にした幸村が叫んだ。
こりゃ重症だと思いつつも慶次は何だか面白くなり煽った。
「でもさあ想像してみなよ。こう好みな感じをさ!大事だぜあんた大将なんだしさぁ」
大将と言われうんうん唸りながらも真っ直ぐな性格の幸村は目を閉じ考え始めた。
慶次が助け舟を出して
「あんた好みそうだと…まあ武芸にも精通してそれなり腕がたって…、あ、団子とか飯とか好きだからまつ姉ちゃんみたいに旨い飯やらが作れて………、こう…主として悩んでるときにびしっと背中を押してくれるような感じがいいんじゃないかい?」
(武芸に秀でて…炊事がこなせて…悩みにものれる…)
幸村は一生懸命うんうんいいながら考えている。
ぱっ…頭の中で何かがはじけた。
(…あ…)
はじけたのは茜色…。
幸村は自分の胸の音が強く響いた気がした。
「…さ‥すけ…」
ぽろりと出たのは自分が幼い頃から側にいる茜色の髪を持つ忍びの名前だった。

「え?」
慶次が聞き返した。
「な…なんでもないでござる!!」
幸村は明らかに動揺した態度でごまかした。
「そ…其れがし急用を思い出した。慶次殿…ごめん」
そういうと幸村は風のように去っていった。

慶次は幸村が去って行った方を見つめながら
「…あれ…あんまり気づかせたらならない事を言ったかな」
慶次はこの城の優秀な忍びに見つからないよう、この直後上田を後にした。
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