文 忍び

□蒼紅決闘
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ここは信州上田城、城門前。そこにはなぜか奥州の独眼竜とその腹心、竜の右目片倉小十郎が轡をならべてやってきていた。しかし城門前はふだんとは違いいささかいやな空気が漂っていた。

「よぅ…真田幸村。なにしてんだ門の前で」
馬から降りながら政宗は口を開いた。
政宗の視線の先には戦場と同じ燃えるような覇気を出している幸村が仁王立ちをしていた。
「はっきり言わせていただく。伊達殿速やかにおひきとりくだされ」
大きなよく通る声で幸村は告げた。
政宗は心外そうな顔をしながら大声で負けじと告げる。
「HA!そう簡単にひきさがれるか!!こっちは奥州から甲斐に行って無駄足を踏んだ挙げ句ここに来たんだ。単刀直入に言う。真田ぁ!!猿をだせ!」
甲斐に行くともう佐助は躑躅が崎館にはおらず上田へ帰ったと信玄に告げられたのだ。
幸村はそれを聞くと
「やはり…佐助が目的でござったか。」
「やはり…だと…?どういうことだ」
幸村は不敵な笑いを浮かべた。そして言い放った。
「政宗殿、お主達が到着する前に御館様より書状が届いたのだ。お主が佐助を付け狙い、其れがしより奪おうとしているとな」(あ…んのクソじじい…)
政宗は心の中で牙をむいた。口にするとこの熱血の事だ、御館様を侮辱したとか言いかねない。
一応(?)佐助の主だ穏便に事をすませたい。
しかし幸村は続ける。
「佐助は其れがしの家族も同然、強いていえば我らは夫婦のようなものだそれを奪おうなど許せん!」
「夫婦……だと?」
ゆらりと政宗が剣を抜く。怒りの琴線に今の言葉がふれてしまったのだ。
「政宗様…、落ち着くのです。今は我々は同盟国同士、万が一があれば…」小十郎が諫める。怒りのゲージが満タン手前で止まる。
「…HA…、確かに腹心だもんな猿は、あんたの。だが主従と夫婦は違うだろうが」
小十郎を指していう。
「俺と小十郎は確かに一心同体の主従だ。だがな飯を毎日一緒に食うわけでもねえし同じ布団でねるわけでもない。夫婦とは違うんだよ」
すると幸村は信じられないような顔で政宗をみた。
「其れがしはいつも佐助と食事をするぞ!」
「HA…?」
「其れがしの食事は佐助が作る。洗濯もだ。夜も共に眠っておるぞー!!」
幸村の叫びと共に、政宗のバサラゲージがMAXになった。
「真田ぁ…後悔させてやるぜ」
そう言い放つと六爪を抜き放ち幸村へとかける。「こい!伊達…政宗!!」
「火炎車ー!!!」
「HELL DRAGON!!!」
どかーん!
大きな爆発音がこだました。



夕方、佐助が諜報から帰ると上田城城門は半壊・中の城にも損傷がでていた。
(まさか豊臣が…)
と思ったが城門前で仰向けに倒れている。主と竜をみてげんなりした。

帰ってきた佐助をみて二人は同時に声をかけた。佐助は怖いくらいのスマイルを2人にぶつけると、表情のない顔になり
「旦那…1ヶ月飯・おやつ抜きね」
スマイルに凍り付いていた幸村が絶叫をあげた。
「竜の旦那は…あー右目の旦那よろしく」
政宗が佐助の視線の先をみるとそこには極殺モードの小十郎が立っていた。

蒼紅2人の悲鳴が夕方の上田の空にひびいた。
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