稔「なぁ、アイツ、知らんか?」
京の長州藩邸。普段、無口であまり他人に興味を示さない吉田稔麿が尋ねるのは、未来から来たという娘のことだ。
高「あぁ…知っちょる。」
一方、尋ねられた高杉は口元に笑みを浮かべながら答えた。
稔「どこじゃ。」
高「分からんが、アイツもお前を探しちょった。」
稔「……そうか。ありがとう。」
高「稔麿!」
稔「?」
高「良かったな!」
稔「……は?」
訳が分からない、という顔をした稔麿を置いて高杉は去っていった。
藩邸を歩き回っていた稔麿は、ふと向かいの廊下を見た。
そこにいたのは確かに娘だが、日本髪を結っていた為、稔麿は目当ての娘ではないと判断した。が、
『あ!稔麿さんいた!』
振り返った娘は紛れもなく探し人で。
『探して…あ!』
稔「!!」
ガシッ
廊下をぐるりと回って走ってきて、自分の一歩手前でこけた娘を稔麿は間一髪で抱き留めた。
稔「危ないな。」
『ゴメンなさい!』
稔「…その髪は、どねえした。」
『あ、これを見せたくて稔麿さんを探してたんです!桂さんに結ってもらったんですよ!』
似合いますか?と首を傾げる娘に、たちまち稔麿の顔は真っ赤になった。
稔「…うん…うん、似合っちょる。凄く、綺麗じゃ。ただ…」
『ただ?』
稔「僕が、一番に見たかった、な。」
日本髪、結ってみました
吉田稔麿の場合
嬉しいけど、妬けます
(稔「(桂さんに感謝じゃな。)」)
(『あ、桂さんに口説かれました。これから茶屋でもどうじゃ、って。』)
(稔「(前言撤回。呪う。)」)
(『でも稔麿さんに早く見せたかったから断りました。』)
(稔「そうか…(絶対渡さないけえの!)」)