お題

□写真
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「ねぇねぇ、先輩」
「……」


「先輩ってば!」
「っ。うるさいなぁ。一回言えば分かるよ!」


妙な奴になつかれた。
「だって先輩返事してくれないんだもん」
口を尖らせているやつは一つ下の後輩の新井。

成績優秀、スポーツ万能。人懐っこい性格で入学してすぐ有名人になった。その新井が成績もそこそこ、運動もそこそこな俺になにかと構ってくる。


「お前、俺が今何してるか分かってるよな?」
「うん。写真撮ってる」


「だったら邪魔すんな」
「え〜。じゃぁ俺も写真とろ」


そういってカシャッと一枚。
「ばか。お前、なに俺撮ってんだよ!」


「なにって、先輩。先輩知ってた?先輩ってめっちゃかわいいんだよ」



爽やかな笑顔で笑いかけられ不覚にもドキッとした。


「お、お前な、男がかわいいなんて言われてもうれしくねえんだよっ」


「だってかわいいんだもん」
「かわいい言うな!つうか、貸せ!抹消してやる」


「ヤダよ〜。俺の宝物にするんだもん」
「宝物なんかすんな!早くカメラ貸せ!」


俺の写真なんか持ってるなんてバレたら女子にボコられてしまう。早くこいつから写真を取り返さなければ。


しばらく抗争を繰り広げたあと、疲れた俺は荒い息を整えて


「…分かった、お前がそこまでいうなら仕方ない。その代わり、お前とは金輪際口聞かないからな!」


「え〜」
「だったらカメラ貸せ」


俺と話せないより写真を処分するほうをやつは選ぶはずだ。
数分迷った挙げ句、
「…分かった」
お?やっと渡すようになったんだな


「写真は捨てない」
「そうそう。写真は…ってはぁ!?お前、俺の話聞いてたか!?」


「うん。先輩口聞いてくれないんでしょ?」
そんな笑顔で言うなよ。


「いいんだな?話さなくても」
「うん」


あっさり写真を選ばれた俺は何故か軽いショックを受けた。


「……じゃぁ絶対話しかけるなよ!」
「うん」


「……〜っ。新井、やっぱ写真返せ!」
「………」


新井は全く聞こえないふうな顔をした。


「口聞いていいから!」
俺がそう言うと新井は満足したような顔で俺を見た。


「じゃぁさ、俺と二人で写真撮ってくれたら返してあげる」

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