短編小説

□ひみつきち
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「ここはボクたちヤブクロンせんたいひみつきちだ!おマエたちオトナははいってきちゃダメたぞ!」

「「そうだ、そうだ」」



(そういえば、俺も…)

――――





「なぁなぁ、シゲル!」

「騒がしいヤツだな…。今日はなんのようだい?」


読んでいた難しい本を閉じたシゲルはため息つきながら、サトシの方に顔を向けた。
サトシがくれば、静かに読書に集中出来ないと理解しての行動だろう。


「シゲルきのうのポケモンせんたいみたか?」

「ポケモンせんたい?…あぁ、レッド、グリーン、ブルーの三人が悪と戦う子供番組のアレか…見てないよ」

「えー!見てないのかよ。まぁいいや、ひみつきちつくろうぜ」

「秘密基地だって?」


なんで?って聞かなくてもわかる。その戦隊物に感化されたんだ。


「嫌だよ。めんどくさい」

そういって、読みかけていた本をまた開いた。


「もう!コドモはそとであそぶのがイチバンだってママが言ってたよ」


シゲルから本を取り上げ、サトシは半ば強引にシゲルを外へと連れ出した。



「…で、どこにつくるんだよ。」

「へへっ、いい所あるんだ!」


そういってサトシの後をついた場所は、シゲルの家からそんなに遠くはなかった。


「…サートシくん?」

「なぁに?」

「『なぁに?』じゃないよ!ココ…おじい様の庭じゃないか!?」


そう。サトシが連れてきた場所はシゲルの祖父兼オーキド博士の敷地だった。


「だってはかせ、すきに入っていいって言ってたし…それにシゲルがきやすい所がいいだろ?」


躊躇<ちゅうちょ>なく森に入ったサトシは自分の庭の様にすいすい進んで行く。
何回も来ているのだと直ぐにわかった。


「シゲル!ここなんかどうだ?いいぐあいにアナ空いてるぜ?」


サトシが指した所はまだ若い楠<くすのき>の幹と幹の間に上手い具合に子供2人ぶん入る空洞があった。


「いいんじゃない」


元からやる気ゼロのシゲルは適当に頷いた。
シゲルの了解を得たサトシは中に落ちている葉を拾い枯れ草を綺麗に敷き詰めた。


「よしっ、シゲルはひみつきちでたいきなっ。オレはみまわりにいってくる!」


サトシを見送りサトシが手を加えた秘密基地に座り込んだ。


(本持ってくれば良かったな…)


ごろんと寝そべり静かに目を閉じた。
目を閉じた分、川のせせらぎや草木の擦れる音、ポケモンの声なのが耳に入ってきた。
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