Gift
□彼女とわたし
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「ねぇアキ、今日茉莉(まつり)ちゃん来てなくない?休み?」
わたしの肩を軽くたたいてそう問いかけてきたのは、真後ろの席に座っていた友達、美和(みわ)。
「うーん、そのうち来るとは思うんだけど…」
わたしはそう答えながらも、昨日はどんな感じだったっけと思い返すことを忘れない。
特に明日休むとかそんなことは言ってなかったなぁ。
体調が悪いってこともなかったはず。
いやでも何気に突然サボったりもするし。
茉莉、来ないのかな……。
「そっか。あ、ならみんなでメールしてみよー」
美和は考え込んでいるわたしには気付かずに、そう言って隣に座っている3、4人の友達に声をかけ、みんなで楽しそうに携帯を弄りだした。
なんでも全員で一斉に同じメッセージを送ってやろうって話らしい。
「もちろんアキも送るんだよ」
「いいよ。なんて打つの?」
「『今日って授業あるんだよ、ハート。知らなかった、ハテナ』」
「なにそれ。知らないわけなくない?」
「まあね。わざとだもん」
「えー、茉莉どう返してくるかなー。……はい、打てたよ」
「じゃあ、みんなで同時に送るからちょっと待ってて」
「オッケー」
わたしたちは一応コソコソと話しているつもりだったけど、女子がこんだけ集っていればそれなりの騒音で。
授業中なのにこんなににぎやかでいいのかとちょっと心配しつつ、返信が楽しみでしょうがないわたしだった。
それからしばらくして、メールの受信を告げるバイブ音が次々と鳴り出す。
「きた!」
「なになにー?『知ってるよ、ハート。てかメール来すぎてうざい、ワラ』だって!」
「相変わらず冷たいんだから」
「毒舌っていうか、素直じゃないっていうか」
「でも、ワラってあるだけいい方じゃない?」
「確かに!」
くすくすと笑い合っているみんな。
でもそんな中、わたしだけは笑えなかった。
「ねぇ、わたしの何も書いてないんだけど…」
そう。わたしのメールにはそんな文章は一切書かれていなかった。
「え?ちょっと見せて」
美和の手によって取り上げられたわたしの携帯。
「ぶっ、ホントだ!これ空メールじゃん!ウケるー!見て、アキのだけ空メなんだけど」
笑いとともに次から次へとみんなに回されていく携帯。
その間に茉莉から新しいメールが届くんじゃないかとも期待したけど、全然そんな気配はなくて。
メッセージのないメール画面のまま帰ってきた携帯を見てわたしは泣きそうになった。
「まつりぃ……」