Free*Fly
□1st それは偶然の再会
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帰宅を促すチャイムまであと10分。
授業はずいぶん前に終わり、校内に残っているのは数人の教師と、部活に励んでいる生徒と、あとはよっぽど暇だと思われる生徒だけだろう。
そんな中、教室で机に突っ伏しているわたしはさっきから何度言ったかわからない言葉を懲りもせず口にしていた。
「あぁー、どうしよう」
「理香(りか)ちゃん……」
「でももうこれ以上考えてもどうしようもないよね。…諦めるしかないかぁ」
「だったら、やっぱうちに来てよ」
「だめだって。まなみんちにそんな迷惑かけられないよ」
「迷惑じゃないよ!理香ちゃんいなくなったら、わたし寂しいもん…」
「まなみぃ」
わたしも寂しいよー、と言ってふざけて抱き合う。
でも寂しいってのは本当。
「…やっぱもう一度、頼んでみようかな。一人暮らし」
そう小さな声で呟いたわたしに、まなみは大きく頷いてくれた。
「うん、そうだよ!わたしもできることはなんでも協力するよ!」
「ありがと〜」
まなみの優しい言葉に励まされたわたしは、さっきよりも少し明るい気持ちになり、ようやく高校をあとにすることにする。
校庭ではまだ、部活の後片づけをする生徒が忙しく走り回っていた。