台詞なし小説
□遂想
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【遂想】
長い年月恐れていたこと。
いつか、きっとそうなるのだと解っていたこと。
だからこそ、お互いに気を付けていた。
誰にも気付かれないよう、静かに。
そして…その事態になった時の保険も考えて。
全て、自分たちだけでできるとは思っていなかった。
だからこそ、だった。
そして。
恐れていた事態。
居なくなった愛しき存在。
その悲しみと、
原因となった相手への増悪。
とめどなく抑えられることのできない感情。
自分を捨ててしまう、愚かさ。
心を失ったその愚かな身体に突き刺さるは見覚えのある光。
瞬時に去来した心に込みあがる意思。
感謝と、謝罪。
避けたかった事態は元には戻らない。
だからこそ…
それで、よかった。
自らの意思の弱さに失った者への想いは此処に。
…静かに、宿り…
痛みも後悔もなく。
らしくありながら消えて逝く意識の片隅で、何を願うのか。
…残された子どもたち…
そして、
消えて逝く…
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