台詞なし小説

□翠森
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闇のように暗い森の中。
僅かに光注すは月明り。
静かに、静かに照らす。

隙間から抜けるはその世界。
まるで途を示すかのように。

月明りに照らされて彩られる翠の空間。
その空間の中で点々と彩るのは…その空間には似つかわしくない赫の色。

赫の色を辿る先は、照らされる翠のすぐ脇に。

翠の世界に佇むように存在していた、金色の影。

金色の影は微かに赤く染まっていた。
影自身のものなのか、辿りつくまでに倒した何かのものなのか。
影は腰を下ろし、長き獲物をその両手に添え、項垂れるように俯いていた。

眠っているのか、休んでいるのか。
一見しただけではわからない。

時間の経過と共に、闇が少しずつ碧に染まっていく。
…やがて月の光は朝日の蒼に染まり。

その光を感じたのか、金色の姿が顔を上げた。
静かで…何かを決意した、その表情は何処か疲れを宿していて。

一度深呼吸をし…立ち上がった。

そこにはもう、疲れを宿した表情は消え。
偽りの笑顔が、そこに。

そして歩き出す。
しっかりとした足取りで―


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