3Z置き場

□全国大会-さらば碧き面影-
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文武両道だと銀八が土方に釘をさしたお陰もあってか土方の成績は以前よりも上がっている。
地区予選の初戦も12対0のゴールド勝ちで二回戦へと進んでいる。


学校生活も部活動も充実していて正に良い時期なのだろう。
だが練習量が以前の倍以上に増えたらしく土方の疲れは目に見え始めていた。
夏休み直前には期末テストもある為しっかりと眠れていないようだ。


銀八が職員室でテスト問題を作り終えた後に教室の戸締まりをしに教室へ向かうと一人居残りをしている土方が居た。
机には教科書とノートが開かれておりテスト勉強の為に部活後居残りをしたようだ。
声でもかけてみようと近付いた銀八だったが土方は疲れからか肘をついた状態で寝ていた。





「コイツ寝方も巧いのかよ」




普通ならコックリコックリと揺れる筈なのに彼の場合は本当に揺れる事無く近付かなければ寝ているとは気付けない程。
土方は相当疲れているらしく銀八が側に寄っても起きる気配は無い。


「このままにしておいてやりてェけどな……コレで風邪でも引かれちゃあ野球部にとって大損害だし起こすか」


気持ちよさそうに寝ている土方を起こすのは多少気が引けたが土方の体は土方の体であって今は土方の体では無いと心を鬼にして起こす。




「土方起きろ」

「………」

「お〜い土方く〜ん」

「………」

「土方コノヤロー起きやがれい!!」

「………」





揺すっても、頬を抓っても、彼の命を狙うクラスメートの真似をしてみてもピクリともしない。
余りにも動かない為本当に寝ているのかと心配になる。
最悪な事態が銀八の頭をよぎる。







「……まさか……過労死……?」







と銀八は耳を土方の口元に近づける。
するとスースーと静かな寝息が聞こえホッと一安心した銀八だったが次には予期せぬ事態に見まわれ転んでしまった。
何故なら目を覚ました土方の酷い寝ぼけによって抱きしめられてしまったのだ。




「ってェ……土方寝るなら家で寝ろや」



動こうにもガッチリと抱きしめられていては動く事が出来ない。
気持ちよさそうな顔で寝られては此方は我慢するしかなく、はあっとため息をつくと【ご褒美だ】と笑って眠る土方を抱きしめ返す銀八なのであった。













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怒涛の期末テストも終わり学校は夏休みに入り野球部の地区予選は四回戦へ進んでいた。

四回戦で勝てば土方が銀八に観に来いと言った準決勝進出となる。
野球部の練習量は更に増え野球部の声は1日中木霊している。
暑い日差しの中熱中症になってしまう生徒も居る中野球部の生徒達は本当に体力があるなと日直で学校に来ていた銀八は職員室で涼みながら思った。
すると其処に勢い良く生徒が入って来た。
声からして緊急を要するようだ。
振り向くとそこには3Zの生徒である沖田総悟がいた。





「沖田どうした?お前が慌てるなんて珍しってウワッ!!マジどうしたんだよ!?」




沖田は銀八の元へずかずかと歩いて来たと思えば凄い形相で彼の腕を掴んで引っ張る。
そして「土方が倒れた」と驚く事を告げた。








沖田と銀八が走って向かうと既に土方は木陰で寝かされ周りには野球部員が群がっていた。




「銀八!!トシがトシがっ!!」

「落ち着け近藤……顧問の先生はどうしたんだよ?」

「今日は練習試合の交渉で出てまさァ」

「そうか…取り敢えずコイツが倒れた時の状況を言え」



銀八の問い掛けに土方の側に居た生徒の内一人が話しだす。
彼が話すには、何時もの様に投球練習をしていて急に倒れたとの事だ。
本日は日差しも強く気温も今年一番とニュースでも言っていた。
彼が倒れたのは大方熱中症だろう。




「取り敢えずコイツの事は俺に任せてお前等は練習に戻れ」

【はい!!】

「それからお前等もコイツみたくならねェ様に十分注意しろよ?良く水分とって気分が悪くなったら直ぐに木陰に行って休めいいな?」

【はい!!】



この男は本当にあの銀八なのだろうか?
こんなにも頼もしいと思ったのは初めてだと彼の教え子の沖田と近藤は思う。



「先生、トシをお願いします」
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